映画『すみっコぐらし』異例の大ヒットのウラにある「3つの誤解」

“子供向け”と侮る大人たちへ
井中 カエル プロフィール

成功をもたらした巧みな「設定」

とはいえ『すみっコぐらし』を映画で知り、初めてすみっコに触れるという人も多いはずだ。その点で重要なのが映画オリジナルキャラクターである”ひよこ”の存在だ。

物語の主軸になるキャラクターが必要だが、今作はすみっコの中から選ぶのではなくひよこの自分探しを中心に展開する。ひよこの詳細はすみっコファンも知らず、すみっコ達と一緒にその正体を考察する楽しみもあり、また初見の観客は完成されたコミュニティに入り込んでいくひよこに対するすみっコたちの優しさに惹かれるのではないだろうか。

(C)2019 日本すみっコぐらし協会映画部

本作の物語の成功の要因は、“絵本の中”という設定にあるといえるだろう。

(1)キャラクターコンテンツとしてグッズ展開の可能性
(2)子供も大人も楽しめるストーリー性
(3)物語の暗喩の込め方

(1)に関しては本作の絵本の中に入ったキャラクターたちのグッズを制作することでコンテンツとしての幅が広がり、鑑賞後にぬいぐるみなどを販売するという商法だ。

物語として唸らされたのが(2)である。『すみっコぐらし』は敵を倒す、親を見つけ出すなどの大きな物語が設定されているわけではない。そこで絵本の世界を導入することで、絵本の物語性を獲得すると共に「行って帰る物語」として大きな枠組みができる

また、題材となった作品も有名であり、子供にも大人にも届きやすいのも利点だ。鑑賞中に子供からは「赤ずきんちゃんの世界にいるとんかつは心配だな」という、元となる物語を知るからこその反応もあった。
 
作品に深みを与えるという点において(3)も見逃せない。作中で赤ずきんの世界に迷いこむのはとんかつとえびふらいのしっぽであるが、2人(?)は誰かに食べられることを夢見ている。

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