善悪の前に、「何でだろう」と考えること

——本作は日本社会が抱える闇を映し出していますが、同時に女性の成長も描いています。

貫地谷:「こんなこと起き得ないだろう」と思うようなニュースが毎日流れていますよね。それを耳にするたびに思うのは、そこには何か根本的な原因があったんじゃないかってこと。自分の意見や感性に合わないものを“悪”だと決めつけてしまうところが私たちにはあると思うんですが、そうではなく、もっと「何でだろう」と考えることが大事なんじゃないかなって。つまり、他者への想像力があれば、世の中がもう少し良くなるんじゃないかと。そういう意味でも、本作は語りすぎておらず、想像する自由を観客に委ねています。

『夕陽のあと』より

——息子を育てる里親役の山田真歩さんとの演技合戦が素晴らしかったです。

貫地谷:山田さんは本当に熱くて素晴らしい方でした! 地元の方ともコミュニケーションをとり緻密な役作りをされていましたが、今回の私はそんな心の余裕がなくて、現場ではあまり誰とも話さなかったですね。

——山田さんの演じた役は“島の女”という地元出身の設定でしたが、一方、貫地谷さんが演じた役は島の人々とは距離を置いている女性です。だから、撮影中はあえてコミュニケーションをとらなかったのですか?

貫地谷:撮影中はコテージを借りてヘアメイクさんとマネージャーと3人で住んでいたので、撮影中は台本に没頭し撮影後はスーパーに買い物に行って夕飯を作るという、ご飯を作ることだけが楽しみの生活でした(笑)。ご飯食べたら自分の部屋に戻って台本を読んでいたかな。意識的にコミュニケーションをとらなかったというよりは、あの台本を読むとそんな気分になれなかったんです。