中国で広がる顔認証のシステム、その利便性と「潜在的危険」

「超監視社会」が現実のものに
野口 悠紀雄 プロフィール

日本の空港で導入するシステムとの違い

「日本でも、空港で同じようなシステムを導入するではないか。また、スマートフォンの本人確認のためにすでに顔認証が使われているではないか」との指摘があるかもしれない。

確かに、成田空港では、2020年春から日本航空と全日本空輸が、OneIDという顔認証システムを導入する。乗客がチェックイン時に顔写真とパスポート情報、搭乗券情報を関連付けると、情報は認証システムに格納される。そして、保安検査場の入口や搭乗口などで、歩きながら撮影した顔写真を認証システムの情報と照合して本人確認する。

 

このシステムが導入されると、チェックイン後は搭乗券やパスポートの提示が不要になる。

これは一見したところ、中国の顔認証と同じように思われるのだが、大きな違いがある。それは、顔認証が終了した段階で、データが廃棄されることだ。つまり、顔情報が保存されて、その後も用いられるということはないのである。

また、顔認証によるスマートフォンの本人確認も、すでに実用化されている。しかし、顔の情報は、その端末に保存されているだけだ。したがって、それが他の目的のために使われるということはない。

中国の顔認証のシステムでは、顔情報という重要な個人情報が、永続的に第3者の手に渡るわけで、空港やスマートフォンの顔認証とは本質的に異なるものだ。このことの重要性は軽視できない(なお、日本でも銀行が顔認証の本人確認サービスを導入し始めている)。