「私は大丈夫」の余裕は禁物。
ペット同伴者は災害弱者

この渋谷区の避難の例はとても理想的だ。実際に渋谷区では他のエリアに比べて避難する人数が少なく、避難所に余裕があったことも要因のひとつであると思うが、それにしても区や避難所の対応は素晴らしい。

そして飼い主さんが何より早めの避難を決行したことが重要なポイントだ。災害時には健康な大人でさえも避難に危険が伴う。高齢者や病気の家族、子供、ペットがいる人は避難の準備や移動にも時間がかかる。そう、「災害弱者」である、という意識をまず持つことが大事だと私は思う。

私自身、台風19号のとき暴風雨の中、渋谷のシェルターからケアが必要な犬を自宅に連れていった。自宅について車のドアを開けようとしたら、あまりの強風にドアを持って行かれそうになり危険を感じた。犬を下ろしているときにドアが勢いよく閉まったら大事故になってしまう。さらに、冠水などしていたら、大型犬でも抱いて移動しなくていけない。小型犬や猫であっても複数飼いしていれば、彼らを抱えて身動きを取るのは至難の業だ。

また、受け入れてくれる避難所も限られている可能性もある。実際に、渋谷区のようなケースはまだまだレアだ。千葉県東金市にあるうちのシェルターは、台風15号で被災し、長い間、断水と停電に悩まされた。台風19号では、まだまだ地盤がしっかりせず、裏山の土砂崩れも心配だったので、犬を連れて早めの避難を管理人に提案していた。しかし、東金市エリアでは、ペット同伴避難できる避難所は探してもなかったのだ。

暴風雨の中、動物連れで避難するのは想像以上に大変だ。photo/iStcok

国もペット同行避難を勧めているが、その現実は……

「避難所には、猫アレルギーの人がいるかもしれないから……」
「犬が騒いでしまうと迷惑をかけるから……」

こんなコメントが台風19号の際に、数多くSNSに書き込まれた。多摩川の氾濫で亡くなった川崎市高津区の男性も、犬とうさぎと暮らしていたという。動物同伴で避難することへのためらいが亡くなった要因かはわからないが、「動物がいるから……」と避難を躊躇し、身の危険を感じた人は今回の災害ではとても多かったと思う。

確かに、災害時には人命が最優先される。が、「ペットを飼うのは自己責任なのだから」動物と暮らしている人は自分たちでどうにかしてくださいでは、なんの解決にもならない。基本、国はペットとの同行避難を認めている。自治体によって状況にばらつきがあるが、避難所におけるペットの居場所を決めておくように指導されている。

しかし、以前、命の授業を行った目黒区の小学校で校長先生に伺ったところ「災害時避難所になったとき、動物たちの居場所を決めてはいるが、どの程度の方が連れていらっしゃるか分からないので不安だ」と話していた。