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桁外れの影響力…ローマ法王フランシスコが「国際政治」を動かす力

アメリカとの対立もいとわない

11月23日から26日にかけて、ローマ法王フランシスコが来日する。日本のマスメディアではその宗教的な側面が報じられることが多いが、実はローマ法王は、国際紛争の調停、人権問題への介入など大国を凌ぐほどの国際的影響力を持っている。

最近では対立するアメリカの保守層に対して「アメリカ人に攻撃されるのは私にとって名誉ですよ」と発言して国際的なニュースとなった。『ローマ法王』(角川ソフィア文庫)を上梓した竹下節子氏(比較文化史家・フランス在住)が、法王による外交の重要性を解説する。

ローマ法王フランシスコ〔PHOTO〕Gettyimages

欧米の「根底」にあるもの

38年ぶりにローマ法王が日本にやってくる。

ローマ法王というと、多くの日本人には、インド亡命中のチベット宗教指導者ダライ・ラマと同じように地政学的な思惑なしに世界平和を訴えることで人々に愛される宗教者だというイメージがあるだろう。けれども実は、ローマ法王は今の世界で国際政治においても桁外れな影響力を持っている存在だ。

12億人以上の信徒を抱える世界宗教の最大宗派であるローマ・カトリックの頂点に立つ存在だからというだけではない。19世紀以来、世界の軍事的、政治的、経済的な権力を制覇した「欧米」諸国の文化、文明の根底にある理念が「キリスト教」であるからだ。

 

カトリックはローマ帝国の版図に広がり、ヨーロッパ諸国の植民地拡大とともに世界中に広がった。近代革命も、プロテスタントの誕生も、民主主義や普遍的人権や政教分離の原則までも、カトリック教会の栄枯盛衰の歴史の中で醸成された人類の文化資産だといっていい。

ローマ・カトリックの中央集権的ビューロクラシーは、共通語であるラテン語による膨大な資料を人類に残した。各地の民族宗教との習合を許し、さまざまな修道会によって築かれた柔軟なネットワークは教皇庁が領土を失ってからも発展し続けている。いや、むしろ、20世紀に世界最小の主権国となって以来、カトリック(普遍)という名にふさわしい国境のない共同体を形成している。