そう思うきっかけの筆頭が、「ト音記号」だとか「ヘ音記号」だとかの使い方だと思います。これらの記号は「音部記号」とよばれるものなのですが、いったいどういうしくみでこれらの記号が使われているのか、小学校の音楽の授業でつまづいてしまった私にはちんぷんかんぷん。
でも、そんなあなたも大丈夫! ベストセラー『作曲の科学』の著者、フランソワ・デュボワさんが、基本の「キ」から教えてくれました! もう一度やり直す「音部記号」の講義、はじまります!
音を「絶対的」なものにする記号
「音符」は、音楽を書き記すのにもっとも基本となる記号ですが、五線譜上のどこかに音符を書き入れただけでは、それはまだ、誰が演奏しても同じものとして再現できる「絶対的な音」ではありません。
ドにもレにも、ミにもファにも、何にでもなれる──すなわち、音符そのものは「相対的な音の高さ」だけを示すものであり、長さと同様、個々の楽曲における“絶対値”を決める必要があります。
そして、個々の音符の音程は、「音部記号」とよばれる記号を書き入れてはじめて、明確になるのです。
音部記号には、次の3種類があります。
これらのうち、もっとも頻繁に使われるのが、「ト音記号」です。ピアノを習ったことがある人なら、レッスンの一番はじめに出てきた記号として覚えているかもしれません。
ト音記号がレッスンの最初に登場し、またピアノの楽譜に頻出する理由はシンプルです。現在、演奏されているほとんどの音楽で基本とされている音域の記譜を、もっとも無理なくカバーできるのがト音記号だからです。
ざっくりといえば、私たち人間の声が出せる音域と、現代の楽器が奏でる中心音域をカバーできるのが、ト音記号なのです。
ちなみに、ピアノには計88鍵あり、7オクターブあまりの音域を出すことができますが、その真ん中に来る音域を中心に高い側の音を右手で、低い側の音を左手で弾き分けます。このとき、右手が担当する音域がト音記号で表現される音域、左手の担当する音域がヘ音記号で表現される音域と覚えておくとわかりやすいでしょう。
これで迷わない、ヘ音記号の読み方
これら音部記号のおかげで、譜面の音符がもつ「本当の音」がようやく決定されるのです。次の図を見てください。
左にト音記号が書いてあるおかげで、この音符が「ソ」であることがわかります。
基本になる音がソで、これを日本語では「ト音」ともいうことから、ソの音を示す記号=ト音記号とよばれるようになりました。ちなみに、フランス語では “clef de sol”(ソの音のカギ)といいます。
ト音記号を書くときに最初にペンを置く始点も、ソ=ト音のところです。
同様のしくみで、へ音記号は「へ」の音、つまり「ファ」がここになります、という基準点を示す記号であることから、へ音記号とよばれます。