宇宙に行った日本人たちが、地球を見て抱いた「言葉にならない思い」

彼らはそこで、何を見たのか
稲泉 連 プロフィール

宇宙船の「外」に出た人々

さて、宇宙飛行士は自身の体験を様々な表現で語ったが、ISSやスペースシャトル、ミールといった宇宙船内でのものに対して、質的に異なるもう一つの「宇宙体験」に宇宙船の外に出る船外活動(EVA)がある。日本では土井隆雄、星出彰彦、野口聡一、金井宣茂の4名が、実際にこのEVAを経験した。

合計三度のEVAを行った星出氏は、船外で地球を”足もと”に見たときに胸に生じた思いを、「いまだに言葉にできていない」と話した。

「一度目のときに、ロボットアームの先端に乗って、宇宙ステーションのいちばん前に出て、何にも遮られない状態で地球を見たんです。宇宙ステーションや構造物は全て後ろにあって視界に入らない状態。あの場所から宇宙と地球を見ていたのは、ほんの数分に過ぎないと思いますが、本当に無言にならざるを得ない美しさを感じていました」

「目の前には地球と宇宙しかない。宇宙の闇の深さ、それに対する昼間の地球の青さ。その世界を宇宙服のバイザーを一枚隔てただけの肉眼で見ていると、息を飲むとはこういうことなのかと感じました。足元に見えた地球を含めて、いま自分は宇宙全体を肌で感じているんだ、という気がしたんです」

 

星出氏と同じく、2020年に次の宇宙飛行を予定している野口聡一氏は、EVAという体験をさらに神秘的とも言える表現で描写した。彼は三度にわたって合計20時間ほどの作業を船外で行ったが、その「ある一瞬」に抱いた感覚が今も強烈に胸に残されたままだという。

「ふと目の前にある地球が一個の生命体として――ある意味では自分と同じ生命体として――宇宙に存在しており、いまこうして僕らが話をしているように、そこに一対一のコミュニケーションが存在するかのような気持ちになったんです。僕は地球の周りを回っている。地球も太陽の周りを回っている。大きな物理法則に従いながら、ある一点で二人というか、その二つが共存しているという感覚があった。僕は2005年のあのときから、ずっとそのことの意味を考えてきました」