宇宙に行った日本人たちが、地球を見て抱いた「言葉にならない思い」

彼らはそこで、何を見たのか
稲泉 連 プロフィール

あるいは、2015年に半年間にわたってISSに滞在した油井亀美也氏は、地球の青い大気層の「あまりの薄さ」が胸に焼きついた、と振り返った。

ISSの内部には「キューポラ」というロボットアームの操作盤があり、その天窓が地球や天体の観測にも使用される。そこから地球を眺めていると、「この薄い窓を隔てた外側は、全くの死の世界なんだよな」と彼は唐突に実感したと話す。

地球の背後に広がる宇宙の闇はあまりに深く感じられ、その死の世界に浮かんでいる地球をかけがえのないものだと感じた。それは特別な信仰を持たない彼にして、「これほどすごいものを作るには、奇跡があるに違いない」という思いを抱かせるほどのものだったそうだ。

写真は2014年にドイツ人宇宙飛行士が宇宙ステーションから撮影したもの〔PHOTO〕Gettyimages

「重力」に、感動する

だが、こうした「地球の美しさ」を語る宇宙飛行士の感想には、人によって濃淡があったのも確かだ。

自らの見た地球について「どんなにモニターの技術が進化しても、地上にいては体験できない」と語る飛行士がいる一方、「宇宙から見る地球の美しさは、地上にいたときの想像を越えなかった」と回想する飛行士も複数いた。日本初の宇宙飛行士選抜試験で毛利衛、土井隆雄とともに選出され、二度のスペースシャトルでのミッションを行った向井千秋氏もその一人だった。

向井氏の話を聞いていて興味深かったのは、宇宙から戻った後の「地球体験」こそが、自身の世界観に大きな変化をもたらすものになった、と彼女が語ったことだ。

「宇宙から肉眼で見る地球は確かに美しいものでした。色合いや雲の立体感などは確かに写真とは異なるもので、それは本当に美しかったから。ただ、私にとってその美しさは、期待通りの美しさだった」