宇宙に行った日本人たちが、地球を見て抱いた「言葉にならない思い」

彼らはそこで、何を見たのか
稲泉 連 プロフィール

日本人が初めて宇宙に行ってから約30年、彼らにあらためて自らの「宇宙体験」について聞いておきたいと思ったのは、二つの理由がある。一つは私自身が立花隆氏のノンフィクション『宇宙からの帰還』に感銘を受け続けてきたこと、もう一つはISSを中心にしてきた有人宇宙開発のあり方がいま、「次の段階」に進み始める時期にきていることだ。

NASAは2024年までに月面へ人を送りこむ「アルテミス」計画を発表した。イーロン・マスクのスペースX社やジェフ・ベゾスのブルーオリジン社、さらにはボーイング社など、民間企業による有人ロケット開発や月・火星探査の動きも活発化している。スペースX社の開発する次世代宇宙船「スターシップ」は、その搭乗予定者にZOZOの創業者・前澤友作氏の名前が挙がっていることでも知られるところだろう。

さらにNASAはISSの民間企業への開放を認める方針を打ち出しており、その流れの中でJAXAもNASAの計画への参画に向けて準備を進めている。

2020年には野口聡一氏、星出彰彦氏の二人が、ISSに長期滞在する予定もある。野口氏は民間企業の開発した有人宇宙ロケットでの飛行、星出氏は若田光一氏に次ぐ二人目の日本人コマンダー(船長)としてISSに滞在するという。

星出彰彦氏(2008年)〔PHOTO〕Gettyimages
 

そのように国内外の有人開発が過渡期を迎えつつあるいま、歴代12名の日本人宇宙飛行士は、自身の「宇宙体験」をどのようなものとして語るのか。インタビューではその体験の内的な意味を重視した。彼ら自身の地球観や生命観、世界の認識の仕方などにとって、宇宙に行き、そして帰還した体験が、どのように影響しているのかを知りたいと思ったからだった。

美しさに、頭がガーンとした

宇宙体験について飛行士から話を聞くとき、私が最も心惹かれたのは、彼らの語る「宇宙から見る地球の美しさ」の描写だった。

例えば、前出の「宇宙特派員」・秋山氏は、「ミール」から地球を眺めていたとき、地球の夜明けは「まるで光が音になってくるみたいだった」と語った。低軌道と呼ばれる地上400キロメートルの高さを周回する宇宙飛行士は、地球のいくつかの時間帯を一望できる。とりわけ地球の大気の境目で、宇宙空間の漆黒が深い青へと変化していくグラデーションは、息を飲むような美しさだったという。そして、何よりも彼が衝撃を受けたと回想したのが、宇宙から見る地球の夜明けの光景だった。

「太陽が地表のすれすれを照らし出すとき、恐らく青い波長の光が最初に拡散して、次の赤い波長の光だけが残っているんだと思うんだけれど、水平線というか地平線に当たる部分が本当に深紅に輝くんですよ。で、『あ、夜明けだ』と思った瞬間、深紅に染まった縁の部分が一気に真っ白になる。その一瞬は本当に頭がガーンとして、色が音になってワーっと響きながら迫ってきた、と感じたくらいでした。本当に様々な色の全てが音になって、心地良い音楽のように自分の身体に入ってくるような気がしたんです」