公演時には泣かなかった人の頬にも涙が

そして、2部の頭から登場する、元宝塚のトップスター柚希礼音さんが、スクリーンに現れた時の華やかさとかっこよさといったら。今回は男として生きることを余儀なくされた海賊の長。オスカルのような男装の麗人だが、光源氏を愛することで、自らの女を意識し、宿命の中で揺れ動くさまが、スクリーンを通し、より男として生きねばならない哀しみも深く伝わってきた。

異文化の中、その心情をつかもうと努力して、役柄に臨んだというのがステファン・ランビエールとユリヤ・リプニツカヤ。スケートだけでなく、暴力的なまでの愛情表現、困惑や拒否と複雑にからみあう感情の熱演には、ため息が出た。

物語の後半は、高橋さん自身お気に入りだという、戦いに行く前のミュージカルシーン。公演時、高橋さんが歌い出した時には本当に驚いたが、福士さん、柚希さんたちと歌い船に上がり、大きく剣をつぎあげるシーンを大画面で見ると、さらにこちらの気持ちが鼓舞される。本番では細部は見えにくかった船の上での戦いがよく見え、氷上ならではのスピードあふれる殺陣のクオリティ、その表情まで堪能できる。

公演のチケットは9000円~3万5000円だった。ディレイビューイングは4000円で楽しめる (C)氷艶 hyoen2019 -月光かりの如く-

見る側を平安絵巻の世界に引き込む大きな要因は、それぞれのシーンを彩る幻想的なチームラボのインタラクティブプロジェクションの力も大きい、光源氏と朱雀の君の歌比べの時に、現れては消える墨の文字。狩りのシーンの森や動物。都の四季。都を焼く炎も迫力だが、特に海原の広がりは、自分たちが海にいるようにスクリーンに吸い込まれていく。

大スクリーンで見ることでより深く感じられるのは、物語性だろう。公演のときから後半、次々と起こる悲劇に泣いていた方は少なくなかったが、「実はこれまで涙が出なかったけど、今回初めて大泣きしたのよ」という方もいたほど、多くの観客が涙をぬぐっていた。

特に最後に絶望する光源氏の慟哭の歌と舞。高橋さんのスケーティングの迫力が慟哭の深さをつきつける。芝居も歌もすばらしかったが、やはり最後にスケートで見せた圧巻の舞いが、物語に説得力をもたせ、見るものをねじふせたのだなということを改めて再確認。

生の舞台とは、また違う感覚が得られ、新たな発見のあるディレイ・ビューイング。生舞台とテレビ放送を見た方は新たな氷艶に触れられるし、まだ見ていないという方は、映画館の大きなスクリーンでこの物語と出会える機会をぜひ活用してほしい。新しい氷艶に出会えるだけではなく、高橋大輔さんをはじめとした出演者の方々の新しい魅力に出会えることは、間違いがない。

Information

「氷艶 hyoen2019―月光かりの如くー」のディレイ・ビューイングは、2019年12月29日、30日、31日の3日間。全国の映画館で各日16時から開演。現在、先行販売(抽選)の申し込み期間中で2019年11月24日23時59分まで申し込める
その後は、12月12日~26日に、一般発売(先着)の申し込み期間がある。
チケット発売情報と、居住地の映画館の上映スケジュールなど、詳細情報はサイトをチェック!
「氷艶 hyoen2019―月光かりの如くー」ディレイ・ビューイング情報サイト https://liveviewing.jp/contents/hyoen2019/