大きなスクリーンで「新しい氷艶」

トークショー終了後、いよいよスクリーンでのデイレイ・ビューイングへ。

暗闇の中で、大スクリーンを見ていると、自分がその世界に入っているような感覚となる。これは本番のアリーナの空間で氷上の舞台を見つめていた時はもちろん、同じ動画をみるテレビ画面とも別の感覚だ。

一番の違いは、大スクリーンで見ると、みなの「演技」「表情」がよりよくわかることだろう。豪華衣装の精緻さにも改めて感動する。アリーナ空間でのショーでは、よほど近くの席で、演者たちが近くに滑ってきた時以外は、細かい表情はわからない。生でリンクを観ると、もちろんその空間にいるからこその迫力がある。座る場所によって、見える景色も違うし、広い舞台のどこを見るかも自由だ。生と動画はまったく別の楽しみ方がある。

光源氏役の高橋大輔さんは子役から青年にチェンジするところからの登場。実は公演時、疾走感あふれる滑りとセリフがあまりにも若いので、「上手な若手がいるなぁ」と当初勘違いをしてたほど。現役に戻した体でのスケーティングはキレがあり美しかった。ライバルであり兄の朱雀の君を演じるステファン・ランビエールとの滑りも息がぴったりである。

高橋さん初のラブシーンもスクリーンならではの見ごたえがある。こんな表情で、平原綾香さん演じる藤壺に「あなたが欲しい」と告白していたのか。至近距離での求愛の舞の迫力と困惑する藤壺の表情。御簾の中での抱擁シーンもさらに、息を飲んで見つめてしまう。

全体の雰囲気も壮大で息をのんだが、スクリーンで表情がわかるとさらに切ない (C)氷艶 hyoen2019 -月光かりの如く-

藤壺に別れを告げられた時の高橋さんの泣き顔にもはっとした。「ガチ泣きしてた」と本人も語っていたが、ここだけではなく多くの場面で、高橋さんが実際に涙を流しているのがわかった。哀愁に満ちた表情で笛をふく表情のアップ、リプニツカヤ演じる紫の上へむける笑顔のやさしさ、切なさや悲しみなど、高橋さんの光源氏の演技が、スクリーンからほとばしる。

また、映画館の音響システムのおかげで、セリフや歌だけでなく、息遣いまでクリアに聞こえる。滑った直後、高橋さんが息の荒さを抑え、平然と芝居をするさま。何より、息遣いや吐息が演技をさらに切迫させ、情感あふれるものにしているようだ。そんな音響下で聴く、平原綾香さんの慈愛と情感に満ちた歌の多幸感といったら。光源氏との別れや運命の切なさが、よりリアルになる。

他の出演者の演技にも新たな発見や感慨がある。例えば光源氏を葬りさりたい悪のチーム。波岡一喜さん演じる長道が、荒川静香さん演じる弘徽殿の女御に、幾度となく悪だくみを耳打ちする時の、二人のにんまりとした表情と演技にはユーモアすら感じる。全編に渡り、波岡さんの狂気の宿った目は必見だ。福士さん演じる頭中将は、常に源氏に付添い、初のスケートとは思えぬ安定感で、誠実にそしてナチュラルに存在している。この凄さがより浮き立つ。