「とてつもないものを観てしまった」
ライターの田中亜紀子さんのそんな感想で始まった『氷艶 hyoen2019 ー月光かりの如くー』のリポートをFRaUWebにて公開したのはこの7月のこと。高橋大輔さん(「高」ははしご高)が主演するこのエンターテインメントは、それから3カ月足らずで、全国映画館でのディレイ・ビューイングを開催することが決定したという。

生の「氷艶」を観た上で、ディレイ・ビューイング開催記念トークイベントと大スクリーンでの試写会を取材した田中さんの目にみえた「新たな世界」とは何だったのか。

取材・文/田中亜紀子 

夏の平安絵巻が帰ってきた!

消灯と共にざわめきが消え、真っ暗な闇と静けさに包まれた。その時、大スクリーンに幻想的な氷上の舞台がぼわっと浮かび上がる。あぁ、あの夏の平安絵巻の世界が帰ってくるのだ。映画館ならではの音響で、平原綾香さんの美しいナレーションが始まる。そして居並ぶ宮中の平安時代の貴族の装束の人々の前で、西岡徳馬さん演じる桐壺帝の言葉と雅楽が、見るものを源氏物語の世界へといざなっていく。日常に取り囲まれている家のテレビで録画を見ることとのなんという違いか。自分もその世界の住人になったような気になり、「氷艶」の物語にはいっていった。

(C)氷艶 hyoen2019 -月光かりの如く-

上映されたのは、19年7月に横浜アリーナで開催された、高橋大輔主演の『氷艶 hyoen2019 月光かりの如く』。わずか3日間で4万5千人の観客を魅了した作品だ。「氷艶」とは、フィギュアスケートならではの美しくしなやかな演技と感情表現を通じて、今までにない、日本文化を伝える艶やかな舞台を創りたいとの想いが込められた、氷上エンタテインメント。17年に行われた『氷艶 hyoen2017 破沙羅(ばさら)』は歌舞伎との融合だった。

第2弾の今回は、宮本亜門氏演出、主題歌は、B‘zの松本孝弘氏が担当し、スケーターと俳優、歌手、パフォーマーたちが競演した、源氏物語がベースの音楽劇だ。月光かりの如く、闇を背負った光源氏を演じた高橋さんが、芝居のみらず、ミュージカルスタ―ばりに初の歌を披露していたことも話題を呼んだ。

スケーターは主演の高橋大輔さん、荒川静香さん、鈴木明子さん、織田信成さん、村上佳菜子さん、ステファン・ランビエールさん、ユリヤ・リプニツカヤさんなど国内外の実力者がそろい、歌手の平原綾香さん、元宝塚トップの女優の柚希礼音さん、俳優の福士誠治さん、波岡一喜さんなども出演。スケ―ターも芝居に挑戦し、俳優陣もスケ―ト靴をはき、それぞれの専門分野でリードしながら、新たな挑戦を行う姿が作品をさらに熱くしていた。