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韓国、香港、北朝鮮…「見えない戦争」時代、外交のプロはこう考える

激動の世界を読み解く4つの視点
韓国、香港……激動の東アジア情勢はどうなるのか。外交のプロはどのように外交問題に対応してきたのか。『見えない戦争 インビジブルウォー』著者で日本総研国際戦略研究所理事長の田中均氏がその思考を明かす。

「見えない戦争」が起きている世界

一国・大国主義(トランプ、習近平)、過激な主張外交(金正恩、文在寅)がポピュリズムに乗じて勢いを増す中、国内の趨勢が国際関係に飛び火し、いつ火花を散らす紛争に変わってもおかしくない「見えない戦争」が、世界のそこかしこで起きている。

私は、1969年から2005年まで36年間外務省に勤務し、さまざまな外交の現場に立ち会ってきた。対アメリカ、対ソ連・ロシア、対中国、対朝鮮半島……大きな進展をもたらした外交もあったし、残念ながら不調に終わったこともあった。

日本が大きな経済発展を遂げた70年代、アメリカとの貿易摩擦が問題となった80年代、先進国として世界への貢献を求められた90年代、そして失われた20年と言われ日本自身のアイデンティティーが失われつつある時代。時代ごとに大きな課題があり、また沖縄問題や北朝鮮拉致問題など、具体的に解決を求められる問題もあった。

外務省を退官して14年が経った。この間も世界は大きく変化しているし、現在の日本外交を取り巻く情勢は刻一刻と推移している。ただ36年間の外務省での経験から、個々の情報の意味するところや外交についての意思決定のプロセスは理解できているつもりだ。

そして政府の立場でなく、民間の有識者として見た世界も異なる。そんな私から見ると、残念ながら現在の日本の外交は、高度に複雑化した国際社会に的確に対応できているようには思えない。

政治家からも官僚からも、20年後、30年後にこの国はどうあるべきなのか、そのためにいまどうするか、といったビジョンやアジェンダが見えてこない。

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プロフェッショナルが持つべき「ICBM戦略論」

私は外交のプロフェッショナルとして、常に"結果"をつくることにこだわってきた。私が目指したのは、日本としての国益であり、出世や政治家の機嫌をとることではない。

いまこの“見えない戦争(インビジブルウォー)”の時代においては、官僚も政治家もビジネスに携わる人々も、すべての人がプロフェッショナルであるべきだし、そうでなければ大きな流れのなかにのみ込まれるだけだ。

プロフェッショナルとして、何をすべきか、何を意識すべきか。私は四つのことを常に心がけてきた。これを私は「ICBM戦略論」と名付けている。戦略は目的達成のための手立てと言えると思うし、これは外交に限ったわけではなく、人間のあらゆる営みに適用が可能な考え方である。

通常ICBMはIntercontinental Ballistic Missileでモスクワからワシントンが狙える核兵器搭載可能な長距離ミサイルを言う。このICBMは、Intelligence(情報)、Conviction(確信)、Big Picture(大きな絵)、Might(力)だ。

あくまでも外務官僚としての戦略指針だったが、どんな職業であれ、この“見えない戦争(インビジブルウォー)”を生き抜く上で役に立つこともあるかと思う。