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「沢尻エリカ逮捕は安倍政権の陰謀」という主張があり得ない理由

むしろリベラルの信用を下げてしまう

女優の沢尻エリカ容疑者(33)が合成麻薬MDMAを所持していたとして、麻薬取締法違反容疑で警視庁に逮捕されたことが話題となっている。

逮捕自体も世間を驚かせたが、政府による安倍晋三首相の「桜を見る会」が野党から批判され耳目を集めていた時期だけに、「安倍政権が国民の関心をそらすために、逮捕を今の時期にぶつけたのではないか」との陰謀論もネット上などで広まった。現役の記者や警察関係者に取材し、こうしたことが起こりえるのかどうか、確かめてみた。

 

「タイミングよく逮捕」はムリ

まず、沢尻容疑者の事件について、各種報道や警察発表に基づき事実確認をしてみよう。今月16日、東京・目黒区の自宅マンションでカプセルに入った合成麻薬MDMAを含む粉末およそ0.09グラムを所持していたとして逮捕され、17日に送検された。沢尻容疑者は「私の物に間違いない」と容疑を認めており、以前から使用していたという主旨の供述もしているという。

警視庁は、約1ヵ月前に「沢尻容疑者が違法薬物に関わっている」との情報提供を受け、内偵捜査を進めていた。沢尻容疑者が15日夜に渋谷のクラブで開かれるイベントに参加するとあたりをつけ、16日朝に帰宅した際に、捜査員が接触。その際には現物を所持していなかったが、自宅を捜査したところ、MDMAを発見した。

逮捕までの流れを見ると、ごくごく通常の薬物事件捜査にみえる。では果たして本当に、世間の批判をかわすために官邸が警視庁に対してタイミングを指定し、逮捕させることはできるのだろうか? 薬物事件を長年取材してきたある週刊誌記者は、こう話す。

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「まず、ありえません。理由は簡単で、薬物事件の捜査では、現物を容疑者が所持・保管している現場を確実に抑えることが最も重要ですが、政局に合わせて都合良く逮捕などできないからです。

捜査対象となった人物が、たまたま1ヵ月薬物を使用しないことなんて十分にありえますし、今回の沢尻容疑者が参加したイベントにしても、まさか『桜を見る会』の疑惑に合わせて開催したわけじゃないでしょう(笑)。『どうせ持っているだろう』とか『家にあるに決まっている』という程度のいい加減な理由で家宅捜索して失敗した場合、対象が一般人であってもヤバイのに、芸能人に濡れ衣を着せたとあっては、警察側が猛バッシングを受けることになるからです。

沢尻容疑者を逮捕した警視庁組対5課は芸能人の薬物事件を専門に扱っているのですが、厚生省麻薬取締局と捜査対象がかぶるので、両者は競争関係にある。タイミングなど見計らっていたら、ライバルに手柄を横取りされかねないことも『陰謀説』がありえない理由です」