ソフトバンクはなぜ「金食い虫」WeWorkへの投資をやめないのか?

割高でもベンチャー投資をする事情
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

割高でもベンチャー投資をする理由

でも、ウィーが割高だったということはビジョンファンドを運用するプロたちは重々承知だったのではないだろうか。なぜならウィワークにはスイスに本社のあり、「リージャス」のブランドで世界にレンタルオフィスを展開するIWG (インターナショナル・ワークプレイス・グループ)という公開企業が類似会社として存在するからだ。
 
リージャスが世界に展開するワークステーションの数は60万程度で、ウィーワークと同程度。一方、IWGの11月13日現在の時価総額は35億ドルポンド。米ドル換算で43億ドル程度と、ビジョンファンドが想定したウィーの評価額470億ドルの10分の1程度でしかない。

 

「コンプス」と呼ばれる類似企業の評価をチェックするのは投資のプロなら当たり前なので、ビジョンファンドの運用者達もIWGの時価総額くらいは見ていただろう。実際、ウィーが上場したら「IWGのロング(買い)+ウィーのショート(空売り)」でポジションを取ろうと待ち構えていたヘッジファンドも多かった。
 
さらに、ウィーはニューヨークやサンフランシスコで、オフィススペース全体の2%程度を占める地域トップの不動産事業者だ。不動産企業なら他にも参考とすべき公開企業がいくらでもあっただろう。
 
ではVCのプロ達が470億ドルという極端な評価額でもウィーに投資したのはなぜか。
 
まず投資先が限られていたことからウィーに「何が何でも投資しなければ」というのが先にあったのだろう。ニューマン元CEOは、ウィーは「デジタル企業」であって類似企業は存在しないと主張してきたが、投資のプロ達もそれをムリやり自分達に言い聞かせ、ネット企業として割高に評価することを正当化した可能性だ。
 
ユーザーはその時々の需要に見合ったスペースをフレキシブルに利用できる、これは従来の「オフィス」の概念そのものを変えるものだ、とウィーは自社の革新性をアピールした。しかしオペレーションから見れば、オフィススペースを長期契約で大量に借りてきて、それを企業や個人に小分けしてショートタームで貸し付けるという「スペース又貸し」は、実にリアルな不動産業だ。
 
スペース又貸し事業というのは、売上を伸ばそうと思えばその都度スペースを借りてきて改造し、そこにスタッフも張り付けなくてはならない。コストの中でも変動費(売上が増えれば増えるコスト)の比率が高いと見られるので、売上が伸びた時に利益が爆発的に伸びることは想定しずらい。
 
IWGの粗利率(粗利=売上から仕入れ原価などを差し引いた利益。粗利率はそれを売上で割ったもの)を見れば、良い年でも2割程度。ウィーがIWGよりずっと効率的にスペースを活用できると仮定しても、粗利率が6〜8割とずば抜けて高いグーグルやフェイスブックなどのデジタル企業とは事業モデルが違うことは明らかだ。

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