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ソフトバンクはなぜ「金食い虫」WeWorkへの投資をやめないのか?

割高でもベンチャー投資をする事情
昨日、ついに正式発表がなされたヤフーとLINEの経営統合のニュース。世間の関心がその話題に移ったのを見て、ソフトバンクグループの面々は安堵しているかもしれない。6日に発表された2019年7~9月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が7001億円の赤字と文字通り「ボロボロ」だったからだ。
足を引っ張ったのは主力のファンド事業。中でもWeWork(ウィーワーク)の価値を高く見すぎたことについて、孫正義氏も反省の弁を述べた。

それにしても、なぜソフトバンクは「金食い虫」ウィーワークに資金を注ぎ込み、追加投資まで決めたのか?
 米国の投資運用会社で働いた経験があり、『マネーの代理人たち』の著書もある小出・フィッシャー・美奈氏が、「巨象ファンド」の引くに引けない事情を解説する。
 

キャッシュが燃える!

 「ボロボロでございます」
 
ビジョンファンド の巨額損失で営業赤字が7000億円を超えた四半期決算の説明会、ソフトバンクグループ(以下ソフトバンクG)の孫正義会長はこう切り出した。スクリーン上に映し出されたのは、大嵐で荒れる暗い海の映像。

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 この後すぐLINEとヤフーの統合話が出てきて世の中の関心が切り替わったのは、ソフトバンクGにとっては幸いだっただろう。
 
英語で出費がかさんでキャッシュがどんどん減っていく状態をキャッシュバーンというが、まだ利益の出ないスタートアップ企業が一定期間に必要とする資金のことをバーンレイト(burn rate) ともいう。スタートアップに投資するベンチャーキャピタル(VC)にとっては重要な指標だ。
 
バーンレイトを直訳すると「燃焼率」。何を燃やしているのかというとキャッシュだ。現金が燃えるイメージは、クリストファー・ノーラン監督のバットマン映画「ダークナイト(2008年)」で、ヒース・レジャー扮するジョーカーが山積みの札束に火をつけるシーンだろうか。
 
10兆円のビジョンファンド が投資した共有オフィススペース事業 「ウィー(1月にウィーワークからザ・ウィーカンパニーに改称)」がキャッシュを燃やした速さは強烈だった。
 
ウィーが株式初公開(IPO)のために8月にSEC(米国証券取引委員会)に提出した目論見書を見ると、2019年の上半期だけで営業損失と投資で25億ドルを超える現金流出が起きている。日本円でおよそ6400万円の現金が一時間毎に減る計算だ。一方6月末時点の手持ち現預金は25億ドル弱と、約半年分の必要資金しかなかった。
 
にもかかわらずウィーが今年に入って大幅に投資を加速させたのは9月に予定していたIPOをあてにしていたからに違いない。1月のソフトバンクGの20億ドルの追加投資でついた評価額は470億ドル。ウーバーにつぐ今年第2位の超大型株式公開になるはずだった。その準備の最中、創業CEOだったアダム・ニューマンはモルジブにサーフィンに出かけてしまった。
 
ところがこの目論見書を見た投資家らがその内容の酷さに呆れ、IPOが延期されてしまう。ガバナンスの問題も問われ、ニューマンCEOは退陣に追い込まれた。市場からの資金投入がなくなれば現金が燃え尽きて破綻に追い込まれることは、この開示を見れば誰の目にも明らかだろう。ソフトバンクGが支援に乗り出した。