かぜを引いただけで、医師から119錠もの薬が処方されるとは……

検査とクスリの3割はムダです(前篇)
山田 悠史 プロフィール

かぜで病院を受診したことがあれば分かるかもしれないが、4~5種類ほどのかぜ薬を処方されたことはないだろうか。

最近私が目にした処方箋の例は、以下のようなものだ。この方は熱と喉の痛み、軽い咳があり、近所のクリニックを受診したところ、こんな薬を処方されたという。

 1)カロナール®︎ 200mg   6錠  1日3回 7日分
 2)トランサミン®︎ 250mg  3錠  1日3回 7日分
 3)メジコン®︎ 15mg      3錠  1日3回 7日分
 4)ムコダイン®︎ 500mg   3錠  1日3回 7日分
 5)クラリス®︎ 200mg    2錠  1日2回 7日分

処方された薬は、なんと合計119錠。患者さんは「本当にこんなに薬を飲む必要はあるのか?」と相談するために、私のもとを訪れたのだ。

 

なぜ5種類もの薬を処方されたのか。この処方箋には一応、それぞれ「医学的な」意味を解釈することもできる。

カロナールは解熱・鎮痛薬で、喉の痛みや熱を下げる役割があり、トランサミンも根拠はないが、喉の痛みに有効と信じられている薬だ。メジコンは咳止め薬、ムコダインは痰の切れを良くする薬で、クラリスは抗菌薬。風邪のときに「念のため」、細菌の感染を予防するのに用いられる薬だ。

性善説に立てば、あなたが持つすべての症状を抑え込もうと医師が必死に悩んだ結果なのかもしれない。また、「薬を飲む」ということで病気が改善する(プラセボ効果)という側面もある。

しかしそれでも、5種類もの薬を処方することに私は意義を見出せない。もしかすると、残念ながらあなたの健康のためではなく、「クリニック経営の健康」のために処方された可能性も否定できない。

(photo by iStock)

どんな薬にも副作用がある

ここで忘れてはいけないのは、どんな薬にも必ず副作用のリスクがあることだ。

どんな薬にもアレルギー反応が起こるリスクがある。例えば、多くのかぜ薬で用いられるイブプロフェンならば、飲みすぎると胃や腎臓に障害を受ける可能性がある。

「総合感冒薬」に含まれる抗ヒスタミン薬は、眠気やだるさという副作用を引き起こす。私個人でも、総合感冒薬を飲み続けるかぜの患者さんが「だるさが治らない」と受診し、薬を中止したことで治ったという場面を何度もみている。治すために飲んでいるつもりだった薬で、かえって体調を悪くした好例だ。

また、かぜに対する抗菌薬(クラリス)の処方はさらに深刻な問題をはらむ。ウィルスの感染症であるかぜに全く有効でない抗「菌」薬には、アレルギーだけでなく、下痢や吐き気といった新たな問題を生み出す危険性があるのだ。

そして、ムダに使われた抗菌薬によって、身体にその抗菌薬が効かない細菌が誕生する可能性もある。これは「耐性菌」と呼ばれ、世界中で急速に増加している。

抗菌薬には限界があり、開発が思うように進んでいない現状もある。このまま抗菌薬が処方され続けると、耐性菌が増えてしまい、私たちは将来、ひどい感染症が蔓延したときに、何もできず、ただ手をくわえて見ていなければならないかもしれない。

薬は適材適所、利益と副作用のバランスを考え、利益が副作用を上回るときに使うのが基本。利益がないか小さいときには、副作用のほうを重くみるのが妥当なのだ。そのような天秤と物差しを持っていれば、5種類の薬を使おうとはとても思えない。

では、どのような時にかぜ薬を内服すればよいか。