沢尻エリカを「一斉攻撃」した、日本社会の恐ろしさ

「別に」事件とはなんだったのか
堀井 憲一郎 プロフィール

2007年の三悪役は本当に悪だったのか?

2007年の悪女、沢尻エリカ。

ちなみに池上彰が2007年10月15日の朝日新聞紙面「池上彰の新聞ななめ読み」というコラムにおいて、いま(2007年10月当時)人々がもっとも話題にしている「エリカ様」騒動を朝日新聞はまったく取り上げていないが、その態度は問題ではないか、と指摘している。マスコミがすべて巻き込まれた騒動だったことがわかる(べつに、と沢尻エリカが言ったのは、同年9月29日)。
 
当時、朝青龍と亀田一家と並んで、2007年の三悪役としてマスコミに取り上げられた。

この3人のうち、どの人が不当に悪役に仕立てられているでしょう、とのアンケートが新聞に載っている。回答は朝青龍、沢尻、亀田の順(つまり亀田、沢尻、朝青龍の順でほんとうに悪い人だとおもわれている)〔朝日新聞be〕。

亀田一家のうち、当時、特に悪く言われていたのは、一家の父親である。朝青龍は夏巡業を休んだのにモンゴルでサッカーしている姿が報道されて問題になった年(彼の不祥事による引退は3年後の2010年)。

2007年の三悪役は、亀田、沢尻、朝青龍だというのが国民の合意だった。

いやしかし、それほどの悪でもないとおもうんだけどね。おぬし、悪よのお、とは言われるほどのことはやっていない。

三者とも「行儀がなっていない」だけである。それが国民的圧力を受けた。

人前での行儀が悪いと、その悪さの程度によっては、国民が怒りだすのである。心に刻んでおいたほうがいい。

みんな、同じ部分を刺激されたのだ。これ、いやだ、という感情です。

それが、きみも、あなたも、同じだよねと共有した瞬間に、すぐさまひとつの意志として列島を覆う。いい悪いは別として、これがこの列島の住民の特徴である。

ヒートアップの早さと、感情による圧倒的な統一感がすごい

そのことを自覚しておいたほうがいい、と言いたいが、自覚していてもどうしようもない(いい悪いのいいほうとしては、国民一体となって海外と対峙する場合にとても強い力になる、あたりだとおもう)。

 

沢尻エリカは、この騒動が発端で、露出が減っていく。

彼女が望んでいたのかもしれないが、あまり見なくなった。

2007年の秋の時点で何かが限界だったのだろう。テレビドラマにも出演しなくなった。結婚して、離婚して、それぞれ騒ぎになって、芸能活動も一時休止していて、やっと2014年あたりから本格的に復帰してきた。

事件前のイメージ

「べつに」事件前の沢尻エリカは、清楚な美少女だった。ドラマだと『1リットルの涙』や『タイヨウのうた』など。どちらも病気の少女の役だった。

真面目に生きているけれど、難病を抱えている少女。「べつに」と言い放つような、突っぱったイメージはまったくなかった。大人が安心するようなタイプの、純真な少女だった。沢尻エリカはそういう顔をしているのだ(雰囲気もそういう雰囲気です)。

正統派の美少女である。そういうラインでドラマに出続けるのだとおもってた。

それが、ああた、いきなり不良になったかとおもうと、そのままいなくなっちゃった。そんな感じである。

2015年あたりから、プライムタイムのドラマにも復帰してきて(2014年『ファーストクラス』、2015年『ようこそ、わが家へ』)、この4月から『母になる』の主演である。

やっともとのところへ戻ってきた。そんな感じがする。