MDMAの怖いところは、その剤型にある。通常は小さなタブレット(錠剤)であり、コンビニなどでよく売られているミントの清涼菓子とよく似ている。
粉末の薬物を注射するのは、さすがに抵抗感があるという人でも、ミントのようなタブレットであれば、抵抗が非常に小さくなる。実に気軽に摂取できてしまうことが問題である。
また、売人は繁華街やクラブなどで、「気持ちよくなるクスリだよ」「依存性はないよ」「痩せる薬だよ」などと言葉巧みに若者を狙って声をかけることが多い。
特にクラブなどで飲酒していたり、仲間と一緒で気が大きくなっていたりすると、さらに抵抗感が下がって手を出してしまうことにつながりかねない。今回、沢尻さんもクラブからの朝帰りの後に家宅捜索を受けたと報じられている。
しかし、忘れていけないことは、これは覚せい剤の仲間の合成薬物であるということである。どんなに手軽に摂取できたとしても、当然依存性はあるし、害も大きい。「害があるよ」などと言って売りつける売人などそもそもいない。
そして、覚せい剤よりも恐ろしいところは、比較的新しい薬物であるため、長期的な害の大きさや治療法などが十分にわかっていないというところである。
また、短期的な害としても、MDMAの乱用状況と関連して、アルコールと併用したり、摂取した後にダンスをしたりセックスをしたりすると、急激に体温が上昇して死に至ることがあるということだ。
アメリカの人気俳優のリバー・フェニックスが死亡したのも、MDMAの乱用によるハイパーサーミア(急激な体温上昇)だとされている。わが国でも、有名芸能人にMDMAを飲まされた女性がホテルで死亡した例がある。
このように、あまり聞き慣れない薬物であるし、一見害があるように見えなくても、覚せい剤の仲間であり、強い依存性や害のある違法薬物であることは間違いない。