「アイドマの法則」とは

なぜそうなったかと尋ねたら「どれもやっているうちに達成感があった」という。掃除や洗濯をすればきれいになる。すると、汚れが気になってきた。鍋料理はバリエーションを増やすのが面白くなった。テレビや雑誌で見ると興味が湧いてやってみたくなるという。

おやおや、これは「アイドマの法則」ではないか。マーケティング用語のAIDMAの法則。消費者が何かを購入するまでのプロセスを解説したものだ。

Attentionアテンション(注意)、Interestインタレスト(関心)、Desireデザイア(欲求)、Memoryメモリー(記憶)、Actionアクション(行動)

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シーツがなんか汗臭い(注意)、こないだ買った柔軟剤も試したい(関心)、きれいなシーツで寝たいし、娘のも洗って娘に褒められたい(欲求)、以前も洗ったら寝るとき気持ちよかった(記憶)→天気もいいし今日は仕事が昼からだから洗おう(行動)

は、そんな簡単じゃねーよと思うかもしれない。
だが、昭和30年代生まれのオジサンだってできたのだ。家事を協働する気持ちはあると言う男性は、きっかけさえあれば習慣になると思う。

楽しさを知るとよりクオリティを求めたくなるもの Photo by iStock

ところで、気づけば夫は定年間近。さまざま整理することがあり、女性ファイナンシャルプランナー(FPさん)との面談に夫婦で行った時のこと。

ここへきて、夫は同期のサクラである男性陣から「おまえはいいなあ。カミさんがフリーで働いてるから定年後も楽だろう」とうらやましがられたと、その席で打ち明けた。「あら、奥様、うらやましいんですって」とFPさんに言われたので、ちょっといい気持になって無駄話をしてしまった。

「でも、その方たちの多くは家事育児を奥様に任せてきましたよね。でも、夫は違う。協働してきました。朝起きたとき、夜中に帰宅した夫がお茶碗を洗ってくれていて、ああ、ありがたいって何度思ったかわかりません。夫はどうなのかわからないですが、彼は社会人として満点サラリーマンだったと思います」

FPさんは、へえ~、へえ~と頷きながら、こう言った。

「ああ、それ、いいですね。定年退職された方がご相談に来ると、みなさん、部長ですとか、課長で終わっちゃって、とか、どの役職まで上り詰めたかを何気に気にされている。でも、夫のビジネスマン、社会人としての価値を妻が評価するわけですね。社会人ですから、職場でのありようだけじゃない。家庭人としてどうだったか、という視点も大事ですよね」

社会人としての価値を妻が評価する。なるほど、新しい切り口である。
こちらは客だ。かさ増しで受け取るべきだろうが、私は素直にうれしかった。

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