ジャーナリストの島沢優子さんによる連載「子育てアップデート」。子育ては子どもとの向き合い方ではもちろんあるけれど、向き合うための時間や余裕があることも大切だ。そこで重要なのが夫婦での家事協業ではないだろうか。島沢さんの夫は、結婚当初は家事は一切しなかったというが、今では家事名人。その過程には、相手の否定やクレーム、押し付けと言った言葉とは真逆のコミュニケーションがあった。

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「帰れば山崩しが待ってる」

とある業界でバリバリ働く女性が、とても辛そうにこう言った。

ああ、家に帰りたくない。帰れば山崩しが待ってますから

その日、彼女は3日間の出張帰り。未就学児の息子は、近くに住む親が保育園に迎えに行って夕飯を食べさせて夜帰宅させてくれている。が、問題なのは家事である。公務員の夫は忙しく、息子を朝保育園に連れていくので精一杯だと言われてしまう。

キッチンのシンクにたまった茶碗やお皿の山。洗濯機の前に積まれた汚れ物の山。新聞や郵便物の山。その中には再送請求をしていない宅配便の不在票も含まれる。それらの「山」を、帰宅したらすぐに崩して洗って、分けて、整理する。その背中に「メシはまだなの?」と急かす声が送られてくる。いつものことだ。もうわかっている。

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「(夫は)協働しよう、協働すべきと言うんだけど、やらないですね。度重なるケンカで文句は言い尽くした。だから、もう何も言いません」

え? もうあきらめちゃったの? その理由を尋ねると「彼のプライドを傷つけるから」。

少し前、夫が自分より年収の低いパート妻と家事を協働するのは理不尽と主張する記事を読んだことがある。ほかにも「俺くらい稼いでから言えよ」と家事を拒否された女性もいた。もちろん、同等の収入でも女性がワンオペの風潮が残るのは確かだ。

それが、収入が夫より妻のほうが高い「女高男低」の家庭でも、この流れが変わらぬケースが多いことに驚いた。彼女は、夫が「自分のほう低収入だから家事を押し付けられる」と考えていると思うそうだ。そう言われたの? と尋ねると、「言われてはいないけど、そうじゃないかなと感じる。態度や声の感じで」と言う。

したがって、自主的にワンオペする。夜中に洗濯機を回し、早朝干す。夜寝る前に夕飯の作り置き。睡眠時間は、夫7時間、妻4時間。「もはや意地になってやってる感じ」だという。