「品の悪い中年男性」に対して、韓国の若者が軽蔑の意を込めて使う流行語「ゲジョシ」。「ゲジョシ」とは「犬(ゲ)」と「おじさん(アジョシ)」の合成語だが、一体なぜこのような言葉が生まれたのか。その背景を、ソウル在住のジャーナリスト・金敬哲氏の最新刊『韓国 行き過ぎた資本主義』から、「ゲジョシ」チェックリストとともに紹介する。
他人の迷惑を顧みない
中小企業で次長を務めるファン・ソンミンさん(47歳)は、自分を典型的な中年とは思っていなかった。しかし、ある日、女性社員たちが、こっそり自分のことを「ゲジョシ」と呼んでいるのを聞いて愕然としてしまった。
「ゲジョシ」とは、犬(ゲ)とおじさん(アジョシ)の合成語で、「品の悪い中年男性」に対して、若い世代が軽蔑を込めて使う流行語だ。
ファンさんは、自分がなぜ「ゲジョシ」と呼ばれるのか理解できなかった。失礼だという思いが頭の中を過ったが、だからといって彼女たちを呼んで問いただすわけにもいかない。ファンさんはすぐにインターネットで検索し、〈ゲジョシ・チェックリスト〉というのを見つけ出した。
「ゲジョシ」とは、40~50代の、権威的で自身の利益のためには他人の迷惑を顧みない男性のことを指す。女性や社会的弱者には強いが、立場が上の人には弱いのが特徴だ。
次の項目のうち、一つでも該当すれば、あなたもゲジョシと呼ばれるかもしれない。
① コーヒー(お茶)は、女性が淹れてくれたほうがうまいと思う。
② 女性あるいは店の従業員が自分より若そうだと、すぐにため口を使う。
③ 自分が間違っていても、後輩の前ではひとまず自説を言い張る。
④ 地下鉄で周りの人たちを気にせず、足を広げて座る。
⑤ 相手をよく知るために、私生活を詳しく聞き出す。
⑥ 飲み会も業務の延長!一人残らず出席すべきだ。
⑦ 部下に、業務以外の個人的な仕事をさせたことがある。
⑧ 自分の価値観を人に押し付ける。
⑨ 酔っぱらって、公共の場所で大声で騒いだことがある。
⑩ その気になれば、自分より10歳以上若い女性とも付き合うことができると思う。
② 女性あるいは店の従業員が自分より若そうだと、すぐにため口を使う。
③ 自分が間違っていても、後輩の前ではひとまず自説を言い張る。
④ 地下鉄で周りの人たちを気にせず、足を広げて座る。
⑤ 相手をよく知るために、私生活を詳しく聞き出す。
⑥ 飲み会も業務の延長!一人残らず出席すべきだ。
⑦ 部下に、業務以外の個人的な仕事をさせたことがある。
⑧ 自分の価値観を人に押し付ける。
⑨ 酔っぱらって、公共の場所で大声で騒いだことがある。
⑩ その気になれば、自分より10歳以上若い女性とも付き合うことができると思う。
「確かにゲジョシだ」
ファンさんは呆然とした。
ファンさんは、月に2〜3回、仕事が終わった後、部下を連れて飲み会を開いていた。すべて自腹である。一人暮らしの部下たちに栄養補給させるとともに、仕事のストレスを解消してやりたいと思ったからだ。
飲み会ではいつも部下の私生活を話題にした。「君はどうしてまだ結婚しないんだ」「好きなタイプは?」「男っていうのはね……」「私が若いときは……」
可愛い部下たちの相談に乗っているつもりだったが、ファンさんのこうした行動は全部、部下には「ゲジョシ」と見なされていたのだ。