芸能界を去って20年、上岡龍太郎の「見事な生き方」に学ぶ

「ボクの芸が通用するのは20世紀まで」
週刊現代 プロフィール

地位よりも美学を選んだ

いまの地位に安住するよりも美学を優先した。その潔さが、いまも「上岡さんはすごかった」「もう一度あの姿が見たい」と懐かしむ声につながっているのだろう。

人間、高い地位につけばつくほど、引き際を決めるのが難しくなる。いまの組織から離れると、自分には何も残らないのではないかと不安になるが、かといって新しいことに挑戦する勇気はない。

結局、定年後も会社の名刺が捨てられず、外の集まりで知らない人に会ったときには、「○○社の元部長です」と挨拶してしまう……そんな人も珍しくない。

『50歳からの逆転キャリア戦略』の著者で、人材育成を行うFeelWorks代表の前川孝雄氏が解説する。

「特にひとつの組織で勤め続けた人は、定年を迎える直前になって、定年後にどう人生を過ごしていけばいいかわからなくなりがちです。他の組織で生かせる才能や経験があるはずなのに、そのタイミングを逃してしまう。

その結果、退職後も前の会社の肩書を名乗り続けたり、能力を持て余して再雇用者としてひっそりと働く人がいます。

退職の数年前から自分の引き際を考え、引退後に新しい人生のステージを楽しむための準備をすることが大切です」

 

いまでも義理は欠かさない

何年も前から引退を考え、その準備を進めてきた上岡さんは、引き際も一流なら「引退後の人生の楽しみ方も一流」だ。上岡さんをよく知る芸能関係者がこう明かす。

「引退後、上岡さんは奥さんと一緒に演芸や舞台を見に行くことを楽しんでいらっしゃいました。

神社仏閣にも関心をもたれていて、地方に旅行に行くこともしばしば。『戦火に見舞われた神社や寺に残っている傷を見ながら、その歴史に思いを馳せると、何時間でも平気で過ごせる』ともおっしゃっていました」

辞めると決めたことはスパッと辞めて、次はこれを楽しむと決めたものを思いっきり楽しむ。それが上岡流ということだ。

例外的に新聞や雑誌のインタビューに答えることはあったが、基本的には芸能活動はゼロ。

しかし、これまで世話になった人や、一緒に仕事をしてきた人への義理は欠かさず、友人の葬儀や知人の晴れ舞台に顔を出し、人前に出て話すことはあった。