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人工呼吸器ユーザーは台風をいかに生き延びたか

避難計画も「緩和ケア」
川口 有美子 プロフィール

どうしようか思案していると、患者さんの家族から次々に電話やメールで、土日の派遣を断ってきてくれた。2日間くらいなら家族で何とかするから、ヘルパーの皆さんはご自分の家族といてくださいと。正直言ってありがたい。

しかし、単身独居や家族が介護できない利用者さんもいる。そこのヘルパーは休むわけにはいかない。嵐になる前にタクシーを予約しておこうとしたら、タクシー会社はどこも台風では商売にならないから、明日は休業するという。JRや私鉄なども午後から順次業務停止という。それで土曜の朝から利用者宅で幾人かは待機することにした。

 

それぞれの「避難」法

土砂崩れを心配していた箱根のALS患者さん。なんと避難警報が出る前に、近くの国立病院に自分で避難し入院していた。なんのことはない。副院長に直接願い出て、あっさり入院許可をしてもらえたのだ。こういう時はトップダウンに限る。

武蔵野市でマンション住まいの筋ジス男性は、台風が上陸する前々日からヘルパーと名古屋に新幹線で避難していた。鈴鹿の病院に入院中の友人を見舞って台風が過ぎ去るのを待って自宅にもどるという。台風ならこんな避難もありだ。

江戸川の土手近くのマンションに住むALS女性患者は、江戸川区長の「江戸川区から逃げろ」という避難勧告で、どうしようと迷いつつも自宅待機することに決めた。堤防が決壊しても、マンションの3階までは水は上がって来ないだろうし、いざとなれば夫とヘルパーが4階以上に担ぎ上げてくれると信じたからだ。心配性の私は新宿のホテルに避難することも提案したが、確かに本人たちにとっては面倒ではある。どんな避難所より自宅が便利ということだ。

練馬駅徒歩3分の2LDKマンション住まいの橋本みさおはいつものように学生ヘルパーと自宅待機。学生もこんな激しい風雨の日にアパートにひとりでいるよりは、母親のようなALS患者のそばにいるほうが怖くないし、安心だろう。

江東区は木場にお住まいの男性患者、岡部宏生さんもマンションの住人だ。ハザードマップを見たら浸水予想地域なので、心配になり電話したところ、たとえ断水しようと停電になろうと自宅がよい、大丈夫だよということだった。

さすがに患者さんたちは腹が据わっている。私が心配しすぎなのかもしれない。