# 災害 # ALS # 介護

人工呼吸器ユーザーは台風をいかに生き延びたか

避難計画も「緩和ケア」
川口 有美子 プロフィール

ともみんは、「この川のすぐわきにもALS患者さんの家があります。避難指示が出たので、台風前日に緊急入院しました」とつぶやいた。

「災害時の個別支援計画が機能していません。たまたま9月末にカンファレンスを行った在宅人工呼吸器の患者さんのところで、担当保健師さんに『災害時の個別支援計画では具体的に何をしてもらえるのか』と聞いたら、困ったような感じで『担当の民生委員が見に来ます』という回答でした。

でも現実的に、今回のような大雨暴風のなかで民生委員や近所の方々の手を借りられるのでしょうか。借りられたとしても、どこに避難するのかというのがたいへん不安です。避難所では対応しきれないことは、自分が市役所職員として避難所対応した経験からわかっています。やはり緊急入院するのが現実的ではないかと思います」。

南相馬でもいわきでも、自宅療養中のALS患者の家が水浸しになっているという。

福島の浜通り・中通りの一部の市町村では、東日本大震災の時には原発が津波にやられて放射性物質が飛散し、逃げる手段のない高齢者と重度障害者は取り残され、電気も水も来ない家で耐え忍んだ。

いわきから新宿に集団で避難してきた障害者とヘルパーを、私たちは福祉避難所に指定された戸山サンライズ(バリアフリーの宿泊施設)で出迎えた。東京の障害者団体が東京都に頼んで、ここを福祉避難所に指定してもらったのだった。

でも彼らは故郷に残した家族や仲間が心配で、乗ってきた車にガソリン缶を積んで何回も往復した。そして1ヶ月後、私たちが止めるのも聞かずにいわきに帰っていき、高齢者も含む震災弱者を介護で支えてきた。

その人たちの家が、今度は河川の氾濫で浸水した。福島の人々は繰り返し不自然な自然災害に侵されている。ともみんの話を聞くうちに、私もやるせない気持ちに満たされていった。

 

東京、嵐の前の静けさ?

10月11日金曜の夕刻、私は中野の実家で82歳の父の夕飯を作りながら、週末に上陸するという超大型台風19号を迎え撃つ準備をしていた。945ヘクトパスカル。テレビ画面の上と左に台風情報のテロップが流れ続けている。非常事態宣言だ。

9月9日に関東に上陸した台風15号は暴風で千葉県に甚大な被害をもたらしたが、19号は雨台風で高潮も重なりフルコースで襲ってくるから、河川氾濫など被害想定範囲が広いという。しかも19号は足が遅い。かなりの時間居座るという。想定風速25~30メートル。15号では電信柱が飛んだ。

テレビが「過去に経験したことがない規模」と言うので、家の外のもの、植木や物干しざおなどを家の中にしまい、2階の雨戸はすべて閉めた。

でもまだ金曜日。父はいつもと変わらず、リビングの椅子で居眠りをしていた。このあたりは住宅が建て込んでいて、河川もないから台風には強いのかもしれない。それに地震や火災と違って、準備したり避難したりする時間的余裕がある。事前にいろいろなことができると思った。