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# ALS # 災害 # 介護

人工呼吸器ユーザーは台風をいかに生き延びたか

避難計画も「緩和ケア」

難病患者の単身独居支援へ

福島県出身の男性ALS患者Aさんから療養相談が舞い込んで半年になる。上肢の麻痺も進んできたので、かねてから考えていた東京移住計画をいよいよ実行に移すことになり、Aさんの地元に行ってきた。

訪問の目的は、ご両親に会って息子さんの東京での単身独居プランを説明すること。ご本人はALSにり患してもなお、国会図書館に通って夏目漱石の研究を極めて、いずれは博士論文を完成させたいという希望がある。

都会に出てからも病気の進行で全身の麻痺は進むし、いずれは胃ろう造設、気管切開、人工呼吸器などにも次々挑戦することになる。たぶん親御さんは相当心配しておられるに違いない。

人工呼吸器装着者の一人暮らし、しかもALS患者というのは他国ではあまり類をみない試みだが、さくら会の前理事長、橋本みさおが2003年に達成したこともあり、当方、そのノウハウを橋本から学びつつ、15年前の仙台の女性ALS患者のケースを皮切りに、全国各地で独居者支援に関わってきた。

時には市町村の障害福祉のあり方をまるっと変えてしまうようなダイナミックな運動に発展する。だからやり甲斐はあるのだが、その達成には年単位で時間がかかるし、忍耐と根性、それにけっこうな活動資金もいる。ビジネスにはならないから、私みたいなALSの遺族や当事者のボランティアが各地でぼちぼちやっている。

今回も福島県の長谷川智美さん(ともみん)の要請を受けての一種の助太刀。まずは2人でAさんの人脈をたどって、東京と郡山とで支援者を集めることから始めたのである。

 

大震災に台風……福島の不自然な自然災害

10月28日月曜。ともみんが東北新幹線の郡山駅まで車で迎えに来てくれた。ともみんも数年前にALSの父親を看取った遺族で、今は他の同病者の療養相談に乗ったりして、Aさんのコアな支援者でもある。

郡山駅から車で30分、農村地帯が広がってきた。稲刈りが終わった後の一見のどかな田園風景なのだが、2週間前の台風19号の爪あとは生々しく、浸水地域はあちこちで通行止めだった。それで迂回した街道沿いの家々の軒下にも、湿った土嚢が並べられ、泥をかぶったテーブルや椅子、タンス、ベッドマットレスなども無造作に積まれ、災害ゴミ収拾車を待っていた。郡山を流れる阿武隈川も氾濫した。