医学部入試で出た「他人のおにぎり問題」あなたはどう答えますか?

「食べたくない」という人もいる……
小林 公夫 プロフィール

ときには嘘をつく必要もある

ところで、本問を医学部受験予備校で教える60名ほどの受験生に問いかけたところ、5割ほどは「なぜこの問題が医学部受験の2次試験で問われたのかよくわからない」という風であった。関連が見出せないのだという。一方、5割ほどは医師の仕事と本問にやはり繋がりがあることを見抜き、中には次のようなそれなりの回答をした者がいた。

問1. お忙しい中、稲刈りの作業を体験をさせていただいた上に、とれたての米を炊いて美味しいおにぎりをこしらえてくれた農家のおばあさんには感謝しなければなりません。しかし、私は教師として、おにぎりを食べることを生徒に強制はしません。従来の社会常識、通念からは出されたおにぎりを食べることが妥当のように思えるかもしれません。しかし、他人の握ったおにぎりを食べられない人はこの事例のように確実に存在します、他人の握ったおにぎりを拒絶することは違和感のある行動と映るかもしれませんが、そういう人々の権利を擁護することも、教師の大切な役割だと私は考えます。
 
問2. おにぎりを食べられなかった生徒がいることを正直にいうことは人間として大切な姿勢です。しかし、食べられない生徒の数が多すぎます。大半のものがおにぎりを残した旨を聞いた農家のおばあさんは、どう思うでしょうか。今どきの若者はそんなものだと割り切れるでしょうか。いや、むしろ自分の手が汚いから、私の握ったおにぎりは嫌われたのだとショックを受けることでしょう。どのような場合でも嘘は慎むべきです。しかし、「嘘も方便」ということもあります。クラスメイトの中には残ったおにぎりを全て平らげてしまう猛者も複数いるでしょうし、私も一緒に食べても構いません。おばあさんには「とても美味しく皆で分担し喜んできれいに平らげました。有難うございました」と伝えるのではないかと思います。

「問2」でおばあさんに架空の話をしている点は、評価が分かれよう。しかし、この嘘はおばあさんを騙すためにつかれたものではない。

悪事に結び付く嘘は許されぬであろう。だが行為の目的が手段を正当化する場合はあり、それぞれの利益を比較した上で、目的の価値が上回るのであれば、そのような嘘は許容されるのではないか。

あなたならこの問いに、どう答えるだろうか。

小林公夫HP:http://kobayashijuku.com