医学部入試で出た「他人のおにぎり問題」あなたはどう答えますか?

「食べたくない」という人もいる……
小林 公夫 プロフィール

受験生はどう回答したのか

私の教え子で現在、横浜市立大学医学部医学科に通う1年生が今年、2次試験の面接試験に臨んでこの問題を出題された。

彼は体育会系の学生だったためか、おにぎりを食べない生徒の人権には配慮しつつも、その態度を完全に容認するのではなく、食べる努力をするよう指導する旨の回答を記述したそうだ。この方向性はおにぎりを作ってくれた高齢者の気持ちを考慮したものであろう。

それに対し、その後に行われた面接試験では開口一番、君の小論文の回答では、少数者の人権、つまりどうしても事情があっておにぎりを食べられないような生徒に対する配慮はどうなるのか、と詰問されたそうである。

問題では、「多くの生徒は」知らない人の握ったおにぎりを食べられず、たくさん残しているので、これが少数者を象徴する出来事なのかは考慮の余地があろう。だが、大学の面接官の指摘の内容からすると、やはり(1)の少数者の人権に対する配慮を受験生が持ち合わせているか否かを見ているのは間違いない。近時はLGBTに関する質問も医学部入試の現場では多くなされており、その趨勢とも符合する。

 

2つ目の高齢者に対する意識という観点は、問題文中にさりげなく盛り込まれているが、受験生の意識がさり気なく分かるような仕掛けになっている。2025年には我が国の高齢者の数は人口の30%を超え、800万人いると言われる団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者に一気に参入し、トータルで2200万人にのぼると言われている。

2025年といえば、今年入学した医学部の1年生が卒業する年なのだ。この状況で、高齢者と向き合えないというのは、超高齢化社会の医療従事者としては難しいであろう。

最後に3番目の論点は、これは「嘘も方便」(杏林大学医学部)などで過去に出題実績があるように、患者に言いにくい告知をする技術を、医師に必要な能力・資質として大学側が捉えている可能性がある。

ガン告知の現場も含め、医師は病を抱える患者と向き合う仕事であり、時には、患者に言いにくい内容を告げなければならないことがある。包み隠さずストレートに直球を投げることは簡単で清々しいかもしれない。しかし、美しい嘘、嘘も方便ということもあるのではないか。高齢者に言いにくいことをどのように告げるか、そのバランス感覚が問われているのだと思う。