早稲田大学「教員公募の闇」書類選考で落ちた男性が訴訟を起こした

選考プロセスが不透明すぎる
田中 圭太郎 プロフィール

しかし、中途半端に公募が広がったことで、博士号を取得しているポスドクや、長年非常勤講師で務めている人たちは「狭き門」に苦しんでいると言える。応募のための書類や資料を作成するにはかなりの手間がかかるが、数十件応募して、すべて書類選考の段階で落とされた経験を持つ人も珍しくない。長年の経験や苦労が報われず、徒労感だけが残ってしまう。

さらに、国公立大学では3年や5年を任期とする、任期付き教員が増えている。これも文部科学省が推進したことだ。早稲田大学でも同様に任期付き教員が激増した。任期が切れるタイミングで、テニュア(終身)職に就くことができなければ、無職になってしまうのだ。

2013年には労働契約法の改正によって、5年以上同じ職場に勤務する非正規の労働者は、無期雇用に転換する権利が得られるようになったが、任期制の教員はこの法律との整合性もない。

すべての大学で公募が行われていれば、ポスドクや非常勤講師、任期制の教員にも、いまより就職のチャンスが増える。しかしバランスを欠いた文部科学省の政策によって、本来はだれにでも公平であるはずの公募に、歪みが生じているのではないだろうか。

 

公平性チェックの仕組みが存在しない

Aさんの訴訟から見えてくる大きな問題点は、日本の大学には公募の公平性や透明性を確保する仕組みが存在しないことだ。

公募の不正をチェックする機関が大学内にも外部にも存在しないために、各大学の選考委員会が本当に公正に行われているのかなど、応募する側にはまったくわからない。

Aさんの裁判を支援する、東京ユニオン早稲田大学支部長の岡山茂政治経済学部教授は、フランス文学を専攻するとともにヨーロッパと日本の大学を比較する研究もしている。岡山教授によると、フランスには大学教員の採用や昇進を外部からチェックする機関があるという。

「フランスには全国大学評議会(CNU)という組織があります。大学の教員・研究者はすべて国家公務員で、CNUの専門ごとに分かれた分科会のいずれかに属し、採用および昇進にさいしては大学ばかりでなくCNUの分科会による審査も受けます。

その審査委員の少なくとも3分の2は教員・研究者が投票で選んでいます。フランスでも不透明な採用が問題になったために、このような仕組みが創られました」