早稲田大学「教員公募の闇」書類選考で落ちた男性が訴訟を起こした

選考プロセスが不透明すぎる
田中 圭太郎 プロフィール

Aさんにとってみれば、実績があるにもかかわらず書類だけで落とされたのは、研究者としての存在を否定されたようなものだった。

せめて公平な選考が行われ、透明性の確保が約束されるのであれば諦めもつく。しかし、公平性が担保されているのかもわからない現状では納得がいかない。真実を明らかにする手段は、裁判しか残されていなかった。

Aさんと東京ユニオンは今年6月、Aさんが書類選考で落選した理由と、前任者が選考に関わった疑いなどについて事実の確認を求めるとともに、110万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。選考のやり直しを求めるのではなく、選考の過程を明らかにするよう求める点では、全国初の裁判となった。裁判は8月と10月に口頭弁論が開かれ、現在も係争中だ。

 

大学教員の採用に「公募」が広がったワケ

ところで、教授をはじめとする大学教員の公募は、いつ頃から始まったのだろうか。

文部科学省に問い合わせたが、どの大学が最初に実施したのかは定かではない。ただ、広がったきっかけは国立大学が法人化された2004年以降と見られる。いまでは国立大学法人で原則公募が行われているほか、早稲田大学など大規模な私立大学にも広がっている。

文部科学省が公募を推奨した理由は、国立大学が法人化することで教員が公務員ではなくなったことから、採用の公平性を担保するためだったと考えられる。

文部科学省が推し進めれば、運営費交付金を握られている国立大学法人は、当然従わざるを得ない。歯向かって予算が削減されては困るからだ。

また私立大学も、大規模な大学ほど国から多額の私学助成金を受け取っているところが多い。早稲田大学の2018年度の私学助成金は約97億円で、国内の私立大学で最も多い金額だ。早稲田大学は、私立の中では率先して公募を進めてきた大学でもある。