2019.11.15

LINEを実質買収へ、ソフトバンクGの常套手段「親子上場」の問題点

指摘する声は少ないが…
鏑木 邁 プロフィール

貪欲な経営はいいことだが…

親子上場については、日本政府も海外投資家などからの指摘を受け、改善を進めている。政府「未来投資会議」の今年3月7日の議事録によると、18年12月時点の東証に上場する企業のうち、議決権を50%以上持つなどの支配株主を有する上場子会社は全体の17・2%と2割近く、親子上場企業に限定しても8・5%と1割近い。

一方、米国や英国では親子上場企業はほぼ皆無と言っていい。そもそも米英の取引所では、株主の利益保護の原則が徹底しているため、利益相反になりかねない親子上場はありえないとされている。先の大手証券ストラテジストはこう話す。

「そもそも日本でなぜ親子上場が広まったかというと、戦後の日本社会では『企業は株主のモノ』ではなく『社員のモノ』という意識が強かったからです。

企業側が親子上場をするモチベーションも、『子会社も1部上場企業の方がいい人材が来る』というような合理的理由だけでなく、『役員の天下り先が一部上場の方がハクがつく』といった社内政治的な理由もかなりの部分を占めていました。

今になって政府が急いで改革を進めているのは、近年海外投資家から『利益相反が横行するような日本の株式市場には、安心してカネを出せない』との指摘が増えているからです。民間でも三菱マテリアルのように親子上場を解消する企業も増えていますが、民間企業には個々の事情もあり、徐々に進めていくしかないのが現状です」

 

ソフトバンクGの親子上場による資金調達をめぐっては、肯定的な面もあるのも事実だ。「今の日本企業で『使える手段は何でも使ってカネを集める』という姿勢は孫氏くらいにしか見られません。ヘタを打てば暗殺されてもおかしくないオイルマネーまで取り込んで勝負しているのは、投資家としては立派」(ネット証券ストラテジスト)との指摘が出ているのも頷ける。

そういった孫氏の貪欲さはともかく、上場子会社に出資した多くの個人投資家の利益が最大限に保護されないなら、「所有と経営の分離」という理念を礎とする株式会社という仕組み自体が意味を失ってしまいかねない。そうなれば、「カネを持っている人間が偉い」という資本主義初期の時代に逆戻りになる。

戦後のガラパゴス状況から脱し、日本の証券取引所を国内外の投資家に公正なルールの下で開いていくことが急務だ。

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