危険すぎる「退職金投資デビュー」
退職してからの資産運用といってすぐに連想するのが、退職金での運用です。しかし、これまで投資をしてこなかった人が、59歳から投資のことを考える場合に最も陥りやすい危険は、この「退職金を使った投資」を検討することです。
それまで一度も投資をしてこなかったのに、退職金を受け取ってから突然、退職後の生活が心配になって投資を始める。しかも、日本株投資を始めるというのが「最も危険なこと」だと思うのです。
私が在籍するフィデリティ退職・投資教育研究所が2015年に行った「退職者8000人アンケート」では、退職金で投資をしている人は全体の31・0%に相当する2676人いました。このうち、現役時代から投資をしていた人は74・1%。見方を変えると、退職金で投資をした人の4人に1人は、「退職金で初めて投資をした」ということです。しかも、そのうちの3分の1が日本株に投資しているのです。
私からみれば、こうした人は「ハラハラドキドキパターン」です。
現役世代を対象にしたアンケート調査でよく設問に置く、投資をしない理由の上位に「まとまった資金がないから」という答えがあります。最近では「投資はまとまった資金がなくてもできる」ということを知っている人が増えてきましたが、それでもまだ、「まとまった資金がないと儲からない」とか、「まとまった資金がないと金融機関は相手にしてくれない」といった声が聞かれます。そういう人が、退職金でまとまった資金を得た時が怖いのです。初めての投資、しかも株式投資から始めるというのは、かなりハラハラドキドキものだと思いませんか。