一喜一憂する韓国側関係者たち
11月初めのソウルは既に肌寒かった。緯度は福島県と同じくらいだが、シベリア寒気団が南下してくるため、ソウルには冬が足早にやってくる。
筆者は6日間で50人ほどと面会したが、「文在寅政権が日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を延長するかどうか」という話題で持ちきりだった。そして、韓国側関係者が一喜一憂した点で、大変印象深い取材になった。
11月4日、タイ・バンコク郊外で開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓首脳会議に出席した文在寅大統領と安倍晋三首相が11分間、対話した。
この直後、韓国メディアは保守系から進歩(革新)系まで、「韓日関係改善の道が開けるかもしれない」と好意的に報道し、私が会った韓国の専門家らも「GSOMIA延長の道が開けるかもしれない」という希望を口にした。
だが、その後、この対話を巡って日本政府の冷淡な態度が浮き彫りになるにつれ、李洛淵(イ・ナギョン)首相が不快感を示すなど、徐々に韓国側の空気も怪しくなった。私の取材先の顔色も徐々に暗くなり、11月8日金曜日の昼食を共にした元高官は「今のところ、延長の可能性は10%ぐらいではないか」と語った。

こうした動きを検証してみると、文在寅政権なりに、過去の政策が巻き起こした混乱を収拾したいと考えているものの、依然、「ネロナンブル」(他人がやれば不倫だが、自分がやればロマンス)と呼ばれる独善主義から脱していないことが、よくわかる。