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救いがない…? 就職氷河期世代は「尊厳」をこんなに奪われていた

絶望の質にも勝ち組と負け組がある
「ロスジェネ」とはなんだったのか? “40歳、フリーランスのライター、正規雇用なし、未婚”という就職氷河期ど真ん中経験者が何を失ったのかを描いた小説『ロス男』――。自身もロスジェネの著者、平岡陽明氏がこの世代について綴る。

就職氷河期世代が見た風景

私が2002年に就職したとき、父親世代にあたる団塊の人たちは、祭りのあとのような顔をしていた。二日酔いの朝と言い換えてもよい。「あー、終わっちまったか。楽しいといえば楽しかったけど、当分酒はいいかな」という、あの感じだ。

彼らは高度経済成長、バブル、ジャパン・アズ・ナンバーワンを駆けぬけ、「失われた10年」の後半を過ごしている最中だった。それがさらに何年も続くとも知らずに。

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おじさんたちの昔話は景気よかった。私は出版社の契約社員だったから、「本が飛ぶように売れた」「黙っていても広告が入った」「招待出張でファーストクラスに乗った」「銀座のクラブで飲んだ」といった類の話をよく聞かされた。

ひどいのになると、日曜に会社へ来て自分のクルマを洗車し、休日出勤手当4万円をもらっていたという。自宅のトイレをウォッシュレットに替えた代金を、会社の経費で落とした輩もいたらしい。当人から愚痴られたことがある。

「でも今は、会社が休日出勤するなって言うだろ。お前さんたち年俸制ケーヤク社員を休日に働かせれば、タダだから」。妙に蔑んだ目つきで、こちらに一ミリたりとも同情していないことが伝わってきた。

すでに、とてつもない社内格差ができていたのだ。世代格差が。われわれにとっては憎むべきブラック企業も、おじさんたちにとってはタカリ甲斐のある「優良企業」だったのだ。