アリババ「独身の日」4兆円の売上を達成した驚きの道筋

独自に作りあげたシステムの成果
野口 悠紀雄 プロフィール

エスクローの導入で取引が拡大

11月10日公開の「アリババの強さの秘密、その独⾃のビジネスモデルを分析する」で述べたように、マーがeコマースのサイトを作りはしたものの、当時の中国には、安全な商取引を行なう基本的なインフラがなかった。このため、取引を全国的なものに広げることができなかった。

これを克服するためにマーが導入した仕組みが、今日の「独身の日」につながっている。

それだけではない。電子マネー「アリペイ」の誕生につながり、いま、マネーの世界を大きく変えつつあるのだ。

2003年当時の中国では、タオバオのサイトを通じて売り手が買い手を見出したとしても、「品物を送付して代金をクレジットカードで受け取る」という先進国型の取引はできなかった。売り手と買い手が実際に会って取引をし、商品と代金を交換していた。しかし、ひったくりなどの事故もあった

 

そこで導入されたのが、エスクローだ。エスクローの仕組み自体は、昔からあったものだ(1940年代に、アメリカで住宅など不動産取引の決済保全制度として生まれた)。マーは、この仕組みを応用したのである。

タオバオの場合には、つぎのようなものになる。

・まず買い手は、タオバオに代金を預ける。このため、タオバオの銀行口座に代金を振り込む。
・振り込みの通知がタオバオから届いたら、売り手は、商品を買い手に送る。
・買い手が商品を受け取り、その品質を確認できたら、タオバオが預かっていた資金は、売り手に支払われる。
・もし買い手が受け取った商品が不良品であれば、預けた代金はタオバオから買い手に戻される。

このため、取引相手に不信感を持っている買い手も、安心して購入資金を預けられる。

また、購入代金はすでにタオバオに預けられているので、 売り手としては、「商品を引き渡したものの、代金を取り損ねた」という 事態を避けることができる。

このようにして、出店者が誰であろうと、買手が誰であろうと、そしてお互いが遠隔地にいようと、取引できるようになったのだ。

こうして、同じ都市に住む数千人同士の取引ではなく、中国全土の数億人を相手に商品を販売できるようになった。

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