「自由な発想」の楽しさに満ちている
では、『りんごかもしれない』『このあとどうしちゃおう』『あるかしら書店』はどんな内容なのか?
『りんごかもしれない』では、ある日学校から帰ってきた少年がテーブルの上にりんごを見つける。それに対して「もしかしたらこれはりんごじゃないのかもしれない」と妄想を膨らませ、さまざまな面から「りんごじゃないかもしれない何か」の可能性をイメージしていく。
『このあとどうしちゃおう』では、死んだおじいちゃんの部屋から見つかった「このあとどうしちゃおう」と書かれたノートにあった、自分が将来死んだらどうなりたいか、どうしてほしいかについての祖父の想像がこれまたいくつも描かれていく。地獄や天国はどんなところなのか、どんな神様にいてほしいのかといったことが、ユーモアたっぷりに展開される。
『あるかしら書店』は「本にまつわる本」の専門店を訪れた人たちが「ちょっと珍しい本あるかしら?」「本にまつわる道具ってあるかしら?」「本にまつわるイベントの本ってあるかしら?」などと店員に尋ね、店員が「『作家の木』の育て方」絵本、「読書サポートロボ」「読書履歴捜査官」といったユニークなものを紹介する、という内容である。
この3冊をはじめ、ヨシタケの作品に共通するのは、問いに対して自由に発想する楽しさが描かれていることだ。
昨今、子どもに対して「君たちは答え(正解)のない時代を生きている」などと言う大人が多い。ヨシタケの絵本の登場人物は、まさに答えのない問いに対し、ああでもないこうでもないと考えをめぐらせる。