ヨシタケシンスケの絵本が小学生にも大人にも「驚異的にウケる」秘密

「答えのない時代」をどう生きるか?
飯田 一史 プロフィール

「ギャング・エイジ」の心をつかむ

一方で、小学校中学年から高学年の子どもにとっても、「ダメな大人」を描く本は魅力的に映る。

たとえば世界的にこの年代に人気のあるジェフ・キニー『グレッグのダメ日記』は、ゲーム好きの子どもと「子どもは外で遊びなさい」「ファストフードなんて本当の食べ物じゃない」とうるさい教育ママや、ダイエット中のはずなのにこっそりガレージでお菓子を食べまくってしまうパパたちとのコミカルな日常を描いている。

宗田理の『ぼくら』シリーズは1985年のスタート以後、現在に至るまで小中学生に人気だが、これも悪い大人や身勝手な大人を子どもがイタズラで懲らしめるという話が多い。

 

児童心理学では、子どもたちが9歳から10歳頃になると、同性メンバーからなる遊び仲間集団(ギャング集団)を形成することから、この時期をギャング・エイジと呼んでいる。

この集団は凝集性が高く閉鎖的で、役割分担やルールが明確である。そして大人の監視から逃れ、秘密の場所を作る。反社会的行動を伴うこともあるが、社会的知識や技能を身につけていく場にもなる(野口武悟・鎌田和宏『学校司書のための学校教育概論』樹書房、2019年、16ページ)。ヨシタケの絵本も、こういうギャング・エイジの反抗的な心性に合うのだろう。

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ところが、これだけでは小学生からのヨシタケ人気は説明がつかない。

2018年の“こどもの本”総選挙でトップ10入りしたヨシタケの作品は『あるかしら書店』『りんごかもしれない』『このあとどうしちゃおう』『りゆうがあります』であり、学校読書調査では『りんごかもしれない』『このあとどうしちゃおう』『あるかしら書店』だった。

このうち、ヨシタケが自分の絵本の特徴だとしている「大人には大人の事情がある」的な内容なのは、『りゆうがあります』だけなのである。

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