ヨシタケシンスケの絵本が小学生にも大人にも「驚異的にウケる」秘密

「答えのない時代」をどう生きるか?
飯田 一史 プロフィール

大人「も」支持する理由

ヨシタケシンスケの絵本は、書店員や子どもたちの親、つまり大人から支持されている。書店などで絵本を買う、またはそのお金を出すのは大人だから、売れることは間違いない。

ただし、のぶみや西野亮廣の作品、『おやすみ、ロジャー』などの「大人に人気」の絵本は、実は大人にしか支持されていないようで、“こどもの本”総選挙にも学校読書調査にも、朝読で読んだ本ランキングにも入っていない。

ヨシタケシンスケの絵本は子どもにもちゃんと支持されている。しかも、どういうわけか一般的な絵本の読者である未就学児や低学年だけでなく、小学校中学年から高学年にまで読まれている。

 

まずはヨシタケ自身の発言からその理由を探ってみよう。

麻生香太郎「ヒットメーカーズ・ファイル」VOL.43(「日経エンタテインメント!」日経BP社、2017年5月号)のインタビューでは、

「ボクの絵本は『大人には大人の事情があるんだよ。子どもにも、聞いたふりをしなきゃいけない時があるんだよ』ということを教えるためにあります(笑)」「小さい頃、大人ってなんか言っていることとやっていることが違うんだよな、と思っていた。それを誰かにちゃんと説明してほしかったんです。今、絵本で描きたいのはコレです」

と語っている。

〈親とか学校の先生は、立場上大人としての意見を言わなければならない。でも本当はがんばってもできないこともあるし、報われない努力もある。子どもはそれを知らないから『親や先生が言うことと実際の世界はどうも違うような気がする』とモヤモヤするんです。だから『大人には、言いたくても言えないことがある』と大人への信用度をいい感じに下げる、身も蓋もないことを知らせたりするのが絵本の役割のような気がしています〉(ヨシタケシンスケ「読むことのつれづれ4」、「サンデー毎日」毎日新聞社、2017年3月5日号、105ページ)

ひとことで言えば、大人と子どもの言い分を両方絵本に込めることで、子どもに大人の気持ちをわかってもらおう、ということだ。

たとえば2015年刊の『ふまんがあります』(PHP研究所)では、まさに子どもの視点から、大人の身勝手さや、子どもには「ダメ」と言っていることを大人はやっている、というダブルスタンダードぶりを徹底して描いている。

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“こどもの本”総選挙で10位にランクインした『りゆうがあります』(PHP研究所)も同様だ。母親が息子に鼻ほじり、ツメを噛む、びんぼうゆすり、ごはんをボロボロこぼす、といったことを「行儀が悪いからやめなさい」と注意すると、息子は「ハナをほじるのはウキウキビームを出すためだ」などと屁理屈を語る。そして「おとなだって、『ついやっちゃうこと』ってあるでしょう?」と言い、お母さんの髪の毛をいじるクセにはどんな理由があるの? と訊く。

大人がこのようなヨシタケの本を「自分たちの本音や苦労を(も)描いてくれている」と支持するのはよくわかる。

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