# 旅 # 本

「ブラタモリ」でブーム再来。日本人が「お伊勢参り」に行きたがるワケ

そのルーツを辿る

庶民に知られたのは意外にも近世

ここ数年、古地図を片手に街歩きを楽しむ〈古地図ツアー〉が盛況だ。

古地図とは作成年代の古い地図の総称で、江戸・明治・昭和のものがポピュラーだが、休日に個人で楽しむ者もあれば、大手旅行代理店が企画する古地図ツアーの参加者も後を絶たない。

ブームのきっかけは2008年に放送を開始した街歩き番組「ブラタモリ」(NHK)ともいわれるが、当時を想像し、先人に想いを馳せるのは、年齢を問わず楽しいものだ。

 

そんな古地図が持つ魅力をベースに、1000年も前から東京に住むという架空のキャラクター・妖怪小僧をナビゲーターとして、江戸・日本橋~伊勢神宮までの〈伊勢参り〉の旅を丁寧な時代考証と緻密なカラー画で再現したのが太田大輔氏の新刊絵本『江戸のたび』だ。

前作『江戸のまち』では、江戸城、両国橋、日本橋、品川、高輪、江戸湊、浅草そして四季折々の風景とタイトル通り〈江戸のまち〉にこだわった太田氏だったが、新作『江戸のたび』では、江戸時代の庶民のいくつかある旅先のなかから〈伊勢参り〉を選んでいる。

いまなお観光スポットとして人気(Photo by iStock)

紀行文としても有名な十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』の弥次郎兵衛と喜多八も目指したのは伊勢だったが、太田氏が新刊で旅のゴールをそこに据えたのも、当時の庶民の誰もがもっとも強く願った〈夢の旅先〉だったからに違いない。――と、絵本を手に、私は勝手に想像している。

とにかく江戸時代の伊勢参りはアツイのだ。

改元という大きな節目を迎えた今年、国内では数々の奉祝行事や儀式が行われたが、天皇・皇后両陛下はその締めくくりとなる「親謁の儀(しんえつのぎ)」で伊勢神宮をはじめ、奈良・京都・東京(八王子)の歴代天皇陵を参拝され、春から続いた皇位承継に関するすべての祭儀が無事に終了したことをご奉告なさることになっている。

即位祝賀パレード「祝賀御列の儀」の天皇陛下と雅子さま(2019/11/10)写真/JMPA・講談社

天皇・皇后両陛下による伊勢神宮への親謁は、神宮が古来、皇祖神とされる天照大御神をお祀りしていることによるが、かつて伊勢神宮には神饌以外の奉献供物を天皇以外がお供えすることを禁止した「私幣禁断(しへいきんだん)」という制度があった。

しかしこの制度によって参拝まで禁止されたわけではなく、721年に始まった神嘗祭(かんなめさい)などの祭儀の際に勅使のお供として伊勢を訪れた人々は、都へ戻った後、伊勢の様子を口々に伝え、それをきっかけに伊勢神宮の存在が民衆の間で広まったとされている。