大嘗祭「天皇の資格」をもたらす「謎の秘儀」で何が行われるのか

皇室最大の儀式の内幕
稲田 智宏 プロフィール

すべてが終わるのは深夜3時

大嘗宮における次第について、これもまた簡単に示すなら、まず夕刻6時に陛下は廻立殿(かいりゅうでん)にて潔斎ののち装束を改め、最初には悠紀殿に入られる。そして殿内にて、御座に着座されて第二の神座に神饌を供進、終わってみずからも神饌のなかからお米の御飯およびお米から作られた白酒と黒酒を口にされる。

次に廻立殿に戻ってしばしのご休憩や潔斎ののち、日付も変わる夜中、主基殿に入られて同様のことを行われる。すべてが終わるのは午前3時半頃となり、つまり9時間ほどの長く厳粛な神事である。

 

念のため改めて書いておくが、実際はかなり手の込んだ神事であることは言うまでもなく、この前日にも天皇の霊魂を強化させる目的の鎮魂祭が行われている。用意される神饌も米や粟のほかに野菜類や魚介類、果物類など多種多様で、それらの供進の次第には事細かな作法が定められている。

そして準備段階においても当然ながら相当の手間がかかっており、たとえば神饌のお米については、新嘗祭なら今では各地から特別に献上されたものと皇居にて収穫された稲が用いられ、それはまた刈穂祭によって選別された格別な稲ではあるが、大嘗祭ではまず亀卜(きぼく)という古来の占いによって収穫地が選ばれる。悠紀国と主基国の二箇所で、令和の大嘗祭では悠紀が東国から栃木県、主基が西国から京都府と神意により決定された。

また不思議に思えるのは、なぜ悠紀殿と主基殿というふたつの殿舎で同じ事を行っているのか、ではないだろうか。おそらくそれは、神に対する丁重さを示す姿勢かと思われる。

というのは新嘗祭でも、大嘗宮正殿内と同じ神座や御座が神嘉殿に設えられ、午後6時からの「夕の儀」と同11時からの「暁の儀」と二回、同じことが繰り返されている。大嘗祭ではこれを更にふたつの殿舎に分けて、丁重さを高めているのだろう。なお、この新嘗祭も神事が終了するのは夜中1時過ぎという長丁場である。

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