平成2年に行われた大嘗祭で撮影された写真(外務省HPより)

大嘗祭「天皇の資格」をもたらす「謎の秘儀」で何が行われるのか

皇室最大の儀式の内幕

きょう令和元年11月14日夕方から、皇位継承に伴う祭祀「大嘗祭」の中心的儀式「大嘗宮の儀」が皇居・東御苑で行われる。

古来から歴代天皇が即位後に臨む「最重要儀式」とされてきた大嘗祭だが、その内容はすべてが明かされてはおらず、いまなお大きな「謎」が残されている。

大嘗宮内部で、新天皇は何を行うのか。儀式に込められた深遠な意味とは──神道・神話研究家の稲田智宏氏が解説する。

 

大嘗祭で「名実ともに天皇となる」

大嘗祭は天皇陛下がみずから執り行う親祭として、もっとも重要な祭である。一代に一度だけの大祭で、毎年行われている新嘗祭が宮中祭祀のなかでは格別な重儀だが、大嘗祭はこの新嘗祭がさらに大がかりとなって執行されるものとなる。

おおよそ新天皇は、践祚によって三種の神器を継承し、即位礼と大嘗祭を行ってようやく名実ともに天皇となるのだともいう。

鎌倉時代の仲恭天皇(第85代)は動乱の世にあって、神器は引き継いでいるが即位礼も大嘗祭も経ないまま78日で退位となり、半帝とも呼ばれている。これを根拠に大嘗祭を行っていない天皇は半帝なのだという説明も見かけるが、この場合は四歳での践祚から短期間で幕府に廃位されたことが理由としては大きいだろう。

とはいえ、所定の儀式や祭祀を踏まえていなければ天皇として充分ではない、という認識は強いようである。

「即位礼正殿の儀」での天皇皇后両陛下(Photo by gettyimages)

この大嘗祭および新嘗祭はともに、神にその年の新穀などの神饌(しんせん)を供進し、そして天皇みずからも下げられた神饌を口にされることを主要目的としている。つまり基本的な性格としては秋の収穫祭といってよいものだ。

しかし新嘗祭が単なる収穫祭ではなく重儀であり、なおかつ大嘗祭が天皇としての資格の獲得を完了させるとまで考えられるほどの、格別な重儀であるのはなぜだろうか。

先述のように大嘗祭は新嘗祭の豪華版といったもので、まずは即位の事に関わらない新嘗の祭について述べると、収穫祭ゆえに古くから皇室だけでなく民間でも行われた祭である。

たとえば『万葉集』の東歌に「新嘗の祭に夫を送り、潔斎している私の家の戸を揺らすのは誰ですか」という意味の歌がある(3460、新嘗は尓布奈未「にふなみ」と表記)。公的な祭祀としてかつては旧暦11月の下卯の日(二度目の卯の日)に行われ、明治6年からは新暦の導入により11月23日とされた。つまり現在の勤労感謝の日である。