2019.11.16
# 中国

中国人も「プライバシー軽視」にはNO!顔認証システム巡り議論沸騰

監視大国で個人の権利は通るのか
古畑 康雄 プロフィール

「まるで犯罪者扱い」と専門家

さらにこの問題に、清華大学法学院の労東燕教授も微信に長文の文章を発表、顔認証技術の運用には法規制をすべきで、人々の個人情報が商業機関や公権力により乱用されることを防がなければならないと指摘した(この文章はすでにネット上から削除された)。

労教授は「自分は、元々は犯罪保護の対象だと思っていた。だが安全保護の手段が無制限に導入され、自分はいつの間にか犯罪防止の対象だと感じるようになった。合法的な市民として、普段から法律を守り、犯罪の前科もないのに、なぜこのように自分を犯罪者扱いするのか?」と述べ、さらに「現代の刑事訴訟法は無罪推定の原則なのに、現在の安全保護措置はどう見ても有罪推定の思考から生まれている。つまりすべての人が公共安全に危険を与える恐れがあるとして、ますます厳しくなる安全検査を受ける必要があるのだ」と指摘した。

 

その上で「あなたは考えすぎだ。政府の善意を理解しなければならない」との考え方に、それは違うと次のように反論する。

「あらゆる人のデータ、普段どのサイトにアクセスしたか、どのようなニュースや動画を見たか、何を買ったか、微信で誰と何をしゃべったかなど、そもそもあまりに多くの情報が集められている。それにさらに生体識別方面の個人データが加わり、莫大な組織によって管理される。この社会では、いかなる個人データも、実際には政府によって管理されることになる。彼らが我々のどれだけの個人情報を持っているのか、なぜ持っているのか、それをどう使うのか、考えただけで恐ろしいことだ。データを管理する人間は神様ではない、私利私欲や弱点がある。彼らが我々の個人データをどう使い、我々の生活をどう管理するのか、全く知ることはできない。ましてこれらのデータの管理が不十分でハッカーに侵入され、犯罪者に使われる恐れだってあるのだ。」

そして北京市の顔識別技術には次のような法律的な問題があると指摘した。

「まず、顔認証は個人の重要な生物学データを収集するのであり、関連機関がそれを行う際に、合法性を証明する必要がある。現行法では、住所、電話番号、メールアドレス、銀行口座など個人情報を収集する場合、事前に合意を得る必要があり、もし不正に利用し、漏えいした場合は法的責任が問われる。生体情報は他の個人情報よりも更に重要であり、本人の同意がより求められるが、収集する主体がどのようなやり方で行うか、何の制限も法的責任も決まっていない。」

「次に、顔識別を導入するにあたっては、人々の重要な人身上の権益に関わることである以上、公聴会を開く必要がある。地下鉄の運賃改定でも、市民の意見を聞く場が設けられたのに、より重要な問題で公聴会を行わないというのは、生物学データが数元の運賃の値上げよりも価値がないというのだろうか?」

「さらに、顔識別により分類を行う際の基準の問題が解決されていない。交通管理部門は一体どのような基準で乗客の分類を行うのか、その基準を大衆に公表すべきかどうか、これらの問題を導入する前に解決する必要があるのではないか。ゴミ分別にも基準を明示しているのに、人の分別で基準を示すべきなのは言うまでもないだろう。そしてその基準が合法的なのか、法律が禁止する差別がないのか、分類に不満があり、自分の合法的権益が侵害された場合、どのようにそれを訴え、救済するのか。これらを事前に解決することなく、どうして地下鉄のような重要な場所に導入すると安直に決定ができるのか?」

いずれも極めてまっとうな指摘だ。

そして最後に「最も恐ろしいのは、自分の情報が公権力により乱用されることだ。自分や家族がどれだけの対価を支払うことになるのか、財産、名誉、自由、健康、生命まで、全てが含まれる可能性がある」「この社会がまだ被害妄想状態に入っていないのなら、安全保護問題はほどほどにすべきだ。ヒステリックに安全を追求すれば、社会にもたらされるのは安全ではなく、全面的な圧迫とパニックだろう」と結んでいる。

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