死は必ず来る。死ぬ瞬間はつらいのか、痛いのか、それとも幸福なのか

すべての先人たちが直面した悩みと現実
週刊現代 プロフィール

「飛ぶように気持ちよかった」

人によっては、ここで「お迎え現象」に遭遇するようだ。昏睡状態を脱した患者から、平野氏が聞いた体験談がある。

「腰の悪いおばあちゃんでしたが、夢のなかで飛ぶように歩いていたというんです。とても心地よい状態で、川とお花畑が見えてきたという。『ひょっとすると、これがあの世の世界かもしれない』と思ったそうです。

川の向こう岸では、亡くなった母親が手を振っていた。嬉しくなって川を渡ろうとすると、息子の声がして、目が覚めたといいます」

平野氏は、昏睡から戻った何人もの人から、ほぼ同様の話を聞き、死の瞬間は、幸福感に満たされて迎える可能性が高いと考えているという。

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小説家で医師の久坂部羊氏もこう語る。

「私が看取ったどの患者さんも、表情を失い、しかし非常に穏やかで安らかな顔になります。私自身は、これを何度も経験して、死はそんなに怖いものではないと考えるようになったのです」

死の瞬間は、決して悶絶するような苦しいものではないようだ。そのとき、意識を失ったまま、人は何も考えずに死んでいくのか。「死を予感させる瞬間」を体験したことがあるという、僧侶で作家の玄侑宗久氏に聞いた。

「私が28歳のときでしょうか。7mもある木から下に落ちました。普通は2~3秒で地面に落ちるはず。ところが、木から足を滑らせた瞬間から、別の時間に入った。15分くらいあったのではないかと思うくらい、ゆっくりした時間のなか、走馬灯を見ました。

無数の黒い枠のある写真が何枚も連なって出てきたんです。次々と見覚えのある場面が出てきます。シアターの観客の状態でした。それを見ながら地面に落ち、病院に運ばれました」

不安も恐怖もなかったという。この体験により、玄侑氏は、死の瞬間には「完全な受け身」になるものだと自覚したという。

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