最後に、死といえば(3)の「残される人との別離」だ。矢作氏の意見。
「あなたが『この世での役割を終えた』と考えれば、未練を断つことはできるはずです。この世での役割を終えたからこそ死を迎えるのであって、別れる家族たちはその貢献を受けて、これからも生きていくのです」
死とは何か?これを押さえたところで、「よく死ぬための教養」を、項目別に見ていこう。
死ぬ瞬間、何を思うか?
死ぬ瞬間というものはいかなるものなのか。前出の平野氏は、死の直前、意識が朦朧として昏睡状態に入ったときは、「睡眠の状態と同じなのではないか」と説明する。
「脳内麻薬が分泌され、二酸化炭素の貯留が起こる。これによって、死を迎える体は、非常に心地よい状態になっていると考えられます。死の瞬間に意識を持っている人はいないでしょう。安らかに死に至るのです」
脳内麻薬のエンドルフィンは、幸福感を感じさせる物質だ。
「たとえばみぞおちを思いっきり叩かれて気絶したときなどに、脳から分泌される物質です。人は激しい痛みを感じるときには一気にエンドルフィンが分泌され、意識を失います。
亡くなる間際に、エンドルフィンが出ることで、人に幸福感を与え、たとえ無神論者であっても、あたかも神様に会ったかのような感覚に誘われるのではないかと思われます」(平野氏)