輸出免税制度は、企業間格差を広げる一因にもなっている。大企業が優遇される一方で、その下請け企業は増税の影響をモロに受けるからだ。
消費増税分を価格に転嫁し、値上げしようとすれば、大企業から「消費税増税分は値下げしろ」と、かえって値下げ圧力を受けてしまう。
ほとんどの下請けは自ら商品を輸出するわけではないので、還付金は受けられない。それでも法人税などはきっちりと税務署が取っていく。
本来であれば消費税還付金は下請けにも還元されるべきものだが、実際には税金を商品に転嫁しづらい圧力がある。
立正大学法学部客員教授で税理士の浦野広明氏はこう言う。
「特に下請け中小企業は、商品を納める大企業に対しては消費税を上乗せできず、一方で税務署からはしっかりと消費税の納付を要求されます。消費税は利益ではなく売り上げに対してかかるため、赤字を出していても払わなければなりません。
当然のことながら、税率が上がれば上がるほど中小企業は苦しくなる。消費増税後の税金を納めるのは法人は'19年12月以後ですが、これで首が回らなくなって倒産する中小企業も出るでしょう」
下請け、孫請けの中小企業が身銭を切って払った消費税が、巡り巡って大企業の懐に入っている。おまけに労せずして、利息までついてくるのだ。
所得が増えれば増えるほど、さまざまな優遇措置があり、低所得者は一向に貧困から抜け出せない格差社会が深刻化する日本。消費税の還付金は、まさにこの構図を作り出す一因だ。
トランプ政権は日米貿易交渉のテーブルで、車などの日本の輸出産業を「ダンピングだ」と痛烈に批判してきた。その理由こそ、消費税とその還付金にある。
「アメリカが消費税を採用していないのは、消費税は逆進性が強く、低所得者や中小企業への負担が重くなるからという認識があるためです。逆に言えば、一部の企業だけが恩恵を受けるものだとも考えている。
ですから、日本の消費税と輸出免税措置の組み合わせは、あくまで輸出企業へ補助金を与えるために作り出された、と見ています。だからアメリカは日本の消費税を批判しているのです」(前出・湖東氏)