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水害に見舞われた武蔵小杉は「住みたい街」ではなくなってしまうのか

行政に「責任」を求める声の妥当性

「訴訟沙汰」の可能性も出ているが…

先月、東日本を中心に各地で猛威を振るった台風19号。各地の痛ましい被害が報じられるなか、高層タワーマンションが林立する駅前一帯が泥水に浸かるという、ショッキングな映像が全国に伝えられたのが神奈川県川崎市の武蔵小杉地区である。

武蔵小杉は首都圏有数の「住みたいまち」の一つとして毎年ランキング上位常連の人気を誇り、不動産価格も東京23区並みに高いエリアとして知られていたが、一部のタワーマンションでは地下にある電気設備や駐車場などが浸水し、電気・水道・下水道が機能停止に陥ってしまった。

その結果、住民は日常生活に重大な困難をきたし、近隣のホテルに避難した人もいるほか、部屋を賃貸に出していたオーナーの中には、家賃受け取りを返上しなければならなくなるなどの経済的損害も生じているという。また中長期的には、エリアの人気凋落を発端とした不動産売買の需給バランス崩壊によって、資産価値へ悪影響が及ぶ可能性も出てきている。

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さて、筆者は昨年春に武蔵小杉エリアなどを含む「住みたいまちランキング」の問題点について、行政目線から切り込んだ『住みたいまちランキングの罠』という本を書いた。今回、武蔵小杉の浸水事案をめぐって、様々な意見が錯綜・迷走している。そうした状況に一石を投じるために、本稿では、これまでの議論とは少し違った立場から、武蔵小杉の現状と今後を検討してみたいと思う。

 

まずは、今回の災害の「責任」の所在を考えてみたい。

今回、マンション住民の中にはマンション管理会社へ抗議する人も出たという。だが事態が落ち着くにつれ、行政の事前対策と対応に責任がある、と考える住民も出てくるだろう。武蔵小杉エリアの新住民たちは、高所得で意識の高い人が多いと想像され、今後、事の推移次第では経済的損害を受けたことについて行政を相手に訴訟沙汰になってもおかしくない。

今回の浸水は、一見すると台風に由来する自然災害であるように見えながら、実際は川崎市の不手際などに起因する「人災」ではないかという指摘も一部で聞こえている。責任の所在を検証するにあたり、考えていかなければならないことは大きく分けて2つある。