論争は終わらない…「揺さぶられっ子症候群」と虐待のあいまいな関係

想像を絶する家族の苦悩と子どもの無念
美馬 達哉 プロフィール

虐待の一種としての「虐待による頭部外傷」

日本での現在まで続く児童虐待の社会問題化は1990年代からスタートしている。

児童虐待防止協会ができたり、児童虐待がニュースとして頻繁に取り上げられるようになったりする中、2000年には児童虐待防止法が施行された。

その後、児童虐待を専門に扱う「日本子ども虐待医学会」が2009年に設立されている。

 

また、「改正臓器移植法(2010年)」では子どもからの臓器提供が認められているため、臓器取り出しを急いで死因解明のための司法解剖ができなくなることを避ける目的で、児童虐待の見逃し防止体制が必要とされたことも影響しているらしい。

そうした中で「乳幼児揺さぶられ症候群」は最近になって「虐待による頭部外傷(AHT: Abusive Head Trauma)」と呼ばれるようになった。

どちらの名前が医学論文で使われているかを調べてみると、たしかに2010年頃でSBSとAHTの論文数が逆転して、AHTの方がよく使われるようになっている。

だが、この二つを同じというのは医学的常識からみて勇み足に思える。

「症候群」とは、原因がはっきりしなくても同じパターンで症状や徴候が見られる病状をまとめて言い表すときの臨床的な病名だ。

この病状をAHTと呼んでしまえばその原因は100%虐待だ、という意味になる。

誰でも分かることだが、医者というのはそれほど絶対無謬の神様のような存在では無い。

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