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論争は終わらない…「揺さぶられっ子症候群」と虐待のあいまいな関係

想像を絶する家族の苦悩と子どもの無念

ある孫の死が問いかけるもの

69歳の祖母が2ヵ月の孫を虐待死させたとして傷害致死の罪で起訴される事件が、2016年に大阪市で起きた。

「頭部に強い衝撃を与えるなんらかの暴行」という検察側の主張が認められ、2017年の一審判決では祖母は有罪(懲役5年6ヵ月)となった。

「2ヵ月の赤ん坊を虐待して死に至らしめる」というところだけ見れば、処罰は当然のように思えるだろう。

だが、祖母の主張としては、暴行などとんでもない話で、娘の買い物中に孫の面倒をみた後、帰宅した娘と話していて、ふと見ると孫が真っ青になっていてすぐ救急車を呼んだとのことだ。

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2019年10月の高裁判決では逆転無罪となり、11月8日に高裁が控訴を断念したため、無罪が確定した。

つまり、孫を虐待したという訴えは、結局のところはえん罪だったわけだ。

「頭部に強い衝撃を与えるなんらかの暴行」との表現は、凶器を使ったり固い床や壁にわざと強く叩きつけたりしたのではないタイプの証拠の残りにくい「虐待」を指して使われている。

それは、いま医学・法律・メディアで議論になっている「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS:Shaken Baby Syndrome)」――赤ん坊を激しく揺さぶると、脳が強い衝撃を受けて出血や障害を起こして、意識が無くなったりけいれん発作をおこしたりして、さらには命に関わったり重い後遺症がでたりすることがある――と関わっている。

 

2002年から母子手帳にも、SBSの危険があるので、むやみに赤ちゃんを揺さぶらないように、という注意喚起は書かれているので、病名や揺さぶりの危険については、育児に関わった多くの方が知っているだろう。

論争となっているのは、そのSBSがたんなる医学的な病名ではなく、道徳的な悪や法的な罪としての児童虐待と直結されることの是非である。