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韓国人を苦しめる「超格差無限競争社会」という生き地獄

これは「近未来の日本の姿」なのか…
日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の有効期限である11月22日が迫り、日韓関係の深刻さが、改めて浮き彫りになっている。そんな中、ソウル在住女性ジャーナリストで、11月12日に日本で出版した『韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩』 (講談社現代新書) が大きな話題を呼んでいる金敬哲(キム・キョンチョル)氏と、東アジア取材30年のジャーナリスト、近藤大介氏が、「悩める韓国」について、2時間にわたって激論を交わした――。(撮影/西﨑進也)

等身大の韓国を知ってほしい

近藤: 金敬哲さんの新著『韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩』を、一気呵成に読みました。書いてあることは極めて悲観的なのに、悲劇ではなく喜劇を観たような気になる不思議な本でした。

金: それは、どういう意味でしょうか?

近藤: シェイクスピアの芝居ではありませんが、韓国社会の人間模様が活写されていて、抜群に面白かったという誉め言葉です(笑)。

金: カムサハムニダ!

金敬哲(キム・キョンチョル) 韓国ソウル生まれ。淑明女子大学経営学部卒業後、上智大学文学部新聞学科修士課程修了。東京新聞ソウル支局記者を経て、現在はフリージャーナリスト

近藤: この本は、韓国語版の翻訳ではなくて、日本版がオリジナルですよね。日本人に向けてこのような本を出そうと思ったきっかけは、何だったのですか?

金: それは、まず私の日本での原体験があります。私は1993年、生まれ故郷のソウルを離れて、上智大学新聞学科の大学院に留学しました。その時、東京で強いカルチャーショックを受けたんです。それは、当時の日本人が、韓国についてあまりに無知だったということです。

「韓国から日本までは船に乗って来たの?」「韓国人は毎日キムチばかり食べてるの?」……。

 

それから26年の月日が経ち、私はいまでも年に数回、日本へ来ていますが、日本人の韓国社会に対する理解不足は、基本的に変わっていません。そこで現在、韓国社会で何が起こっていて、韓国人はどんな生活を送っているのか、いわば等身大の姿を、日本人に理解してほしいと思ったのです。

近藤: なるほど。私も最初にソウルへ行ったのは、ソウル五輪が開かれた「パルパル」(1988年)の年でしたが、日韓相互の理解不足は甚だしかったですね。金さんは日本人のことを言いますが、現地で出会った韓国人たちも、日本人は鬼か悪魔の化身のように錯覚していましたよ(笑)。

その時は、日韓の学生会議で訪韓したのですが、互いに「こんにちは」「アンニョンハセヨ」という初対面の挨拶言葉すら相手の言葉で言えず、「ハロー」「サンキュー」などと英語を使うしかなかった。隣国なのに、挨拶ですら太平洋の向こう側の国の言葉(英語)を使うのはおかしいと思い、帰国後に韓国語の勉強を始めたんです。

金: 韓国は確かに、1998年に金大中大統領が日本文化開放を宣言するまで、日本文化を全面禁止していました。35年間続いた日本の植民地支配(1910年~1945年)への反発からです。

それでも、韓国の若者の間では、日本文化が密かなブームになっていました。私も若い頃、女性誌の『anan』や『non-no』、それに「X JAPAN」などのJ-POPに憧れたものです。

近藤: 確かに私も、1990年代には韓国へ行くたびに、日本の音楽テープや本などを韓国の友人に持って行ってあげました。あの頃は、韓国人が一方的に日本文化に興味を持っていた時代でしたね。