2019.11.14
# 格差・貧困

ホームレスの人が一番怖いものが「私たち」だって知っていますか?

「恐れと不安」が連鎖する社会
飯島 裕子 プロフィール

さらに心理的な距離を縮めるだけでなく、物理的な距離を取り除くことも積極的に行う必要があるだろう。

たとえば避難所で過ごす時間が長くなることが想定される場合、体をきれいにしたほうがいい人には適宜声かけをする、体調面が優れないのならば、医療班に相談する、お酒を飲んでいる人がいたら別室に移ってもらうなど……。これは路上生活者に限ったことではない。「恐れ」を超えた者同士ならばできることはたくさんあるはずだ。

そもそも日本にはホームレスの人たちが利用できるシェルターはない。大雨や酷暑、真冬など厳しい気候の時に利用できるシェルターがあれば彼らも気兼ねなく利用できるはずだ。今回の出来事を機に物理的に解決できることには積極的に取り組んでもらいたい。

 

「生きている価値がない」

「恐れ」は知り合うことで超えられるかもしれない。しかし、ネット上に寄せられたもう一つの意見、「納税していない彼らは避難所に入る権利がない」というようなホームレスの人たちのいのちを軽視する言説には戦慄を覚えるものがあった。

大きく報道されることは少ないが、河原で寝ているホームレスに石を投げたり、ダンボールに火をつけたりする事件が毎年のように起きている。犯人は子どもである場合が少なくない。

そして襲撃した理由について「働かず、社会の役に立たないホームレスは生きている価値がない」と言う。まさに今回ネット上でホームレスに対して発せられた言葉と同じである。それは生活保護受給者にも向けられる言葉であり、津久井やまゆり園を襲った犯人が重度障害者に対して発した言葉でもある。

われわれはホームレスに対して直接手を下さない。しかし人間の価値を金銭や生産性で判断することは、彼らのいのちを蔑ろにすることと深いところでつながっているのだ。

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